本書も異世界悪役令嬢もののひとつだ。異世界悪役令嬢ものには、一つのパターンがある。主人公が、やっていた乙女ゲームの世界に転生する。それもヒロイン役ではなく、悪役令嬢として。ゲームの中では、婚約者だった王子をヒロインに寝取られ、いわれのない罪で断罪され、婚約を解消されたうえ、処刑か追放される。このゲームの結末を知っている主人公は、なんとかバッドエンドを回避しようといろいろ手を尽くすというもの。
主人公はアラサーのOL。残業から帰宅して、乙女ゲームクリスタル・ラビリンスをプレイしていたはずが、気が付いたら、6歳のシェグーレン公爵家の次女エセリアとして転生していた。
どうもこの世界でエセリアは、家の階段から転げ落ちたらしい。メイドに「心配してくれてありがとう」と言うと、「「あなたが受け止めなかったせいよ!」とお叱りにならない・・・」と引かれる始末。どうもエセリアは我儘三昧で育ったらしい。
ともあれ、こちらの世界のアラサーまで生きた記憶のあるエセリアは、とても6歳の養女とは思えないようなことを始める。
最初は、娯楽の少ないのがこの世界なら自分で娯楽を作り出せばいいと、異世界ものでは定番のリバーシを作る。けん玉や人生ゲームと、こちらの世界の記憶があるエセリアは、やりたい放題。
特に面白いのは、BLを流行らせたこと。この世界の女性陣からの支持はすごいらしい。エセリアはこれを利用して、教会に銀行の役目をさせることに成功する。教会といえば、敵役として出てくることが多いが、この世界では割と物分かりがいいようだ。エセリアの言う通り、銀行の役割を受け入れ、おまけにBLまで芸術として認める。
しかし、一番避けたかった第一王子・グラディクトの婚約者になってしまう。もしシナリオ通りになれば、エセリアの恐れている国外追放が待っている。エセリアは全力で婚約解消に向けて動き出すが、無事に婚約は解消できるのか。
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