本書も銭形平次捕物控の中の話のひとつだ。前半はホラー風味で、後半は完全にミステリーとなっており、前半で出てきた不思議なことの謎解きも含まれている。八五郎が聞いた話によると、市ケ谷柳谷にある金貸し・菊屋の倅彦太郎が女の影法師に取りつかれて怯えているというのだ。この話は發端篇、解決篇に分かれており、前者がホラー風味で、後者がミステリーという訳である。
この菊屋の主人の市十郎が殺される。実は、彦太郎は、市十郎の倅となっているが、本当の倅ではなく、先代の甥で、市十六は養子なので、本来なら彦太郎の方が正統らしい。この事件に乗り出すのが平次という訳だ。
今回の話には、四ツ谷の與吉という若い岡っ引きが出てくる。これまで読んだ銭形平次に話には出てこなかったが、岡っ引きとして独り立ちしているらしいから現在売り出し中という訳だ。
ホラーとミステリーの融合というのは、半七捕物帳でよくみられるパターンだが、この話も影響を受けているんだろうなあ。いずれにしても平次の名推理が光り、最後は落ち着くところにおちついたという感じだ。
☆☆☆