物理数学というのは、物理学によく使われる数学というくらいの意味だ。別に、そのような特殊な分野があるわけではない。
本書は、大学2年程度の内容をブルーバックスの1冊としたものである。「物理」数学とあるが、理学部の物理学科に限らず、工学部でも十分に使える内容である。実際に私は工学部(電気)であるが、2回生(関西では〇年生とは言わずに〇回生という)が終わるまで、この内容の事は勉強していた。今は、昔と比べ専門書がものすごく高くなった、現在においては、このような廉価版の本が出るというのはうれしい。
特徴としては普通の専門書に比べると、解説がかなり詳細で分かりやすいということだろう。だからといって、簡単な内容ばかりを扱っている訳ではない。この本の内容を身に着ければ、書かれている分野においては、困ることはまずないだろうと思う。
こういったものを勉強するにはコツがある。書かれている計算式を、実際に追っていくのだ。別にノートに綺麗に書く必要はない。テキストの余白だったり、広告の裏だったりでもいい。大事なのは、読んだだけで分かった気にならないということである。
本書は、微分方程式から始まり、ベクトル解析、複素解析、フーリエ解析とよく使われる数学的なツールが一通り解説されている。しかし、残念ながら線形代数や統計学については触れられていない。内容が解析分野に偏っているのだ。とはいいながらも新書版で300頁以上もある本だ。おそらくこれに線形代数や統計学を加えると、厚さが冗談にならなようなものとなるのだろう。続刊として線形代数偏や統計偏を期待したい。
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