文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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「ケインズ革命」の群像ー現代経済学の課題

2022-10-12 09:48:24 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 経済学には大きく分けると3つの流れがある。新古典派経済学とケインズ派経済学、マルクス経済学である。そして、現在の経済学の主流は新古典派経済学だ。かっては、大学で石を投げればマルクスかぶれにあたるといったほど、わが国ではマルクス経済学の影響は強かったが、今では、一部を除きかなり下火になっている。

 ケインズ経済学は、公共投資などに大きな影響を与えてきたが、多くの派閥があるようだ。それは同じ仏教というくくりの中で、多くの宗派があることに似ている。また最近は落ち目のようにも見える。

本書は、ケインズの一般理論が出てきたときの情勢とそれがいかに経済学を学ぶ者に影響を与えたか。ケインズ理論の簡単な概要、ケインズの学説を継ぐものなどについて述べたものだ。

 この部分はいただけない。20頁に掲載されている部分だ。ここで、Y≡C+I で、Yは生産量、Cは消費、Iは投資を表す。そして簡単のためだろうか、Iは一定額でYから独立しているとある。0<dC/dY<1と想定されていることに注意と書かれている。しかしこれは成立しない。お分かりだろうか? Iが一定ならdY=dCとなり、dC/dY=1となってしまう。他の経済学関係の本も見たが同じようなことが書いてあった。まあ、経済学で使う数学はこんなものだといえばそれまでなのだが、

 もちろんこの本の主役はケインズだが、それに対比される人物としての役割がシュンペーターに与えられている。イノベーションという概念などで、もてはやされているシュンペーターだが、これもいただけない。彼は経済理論が安易に政策と結びつくことに懐疑的であったらしい。彼の処女作「理論経済学の本質と主要内容」に序文には、以下のような文章があるという。

「われわれは、理論と政策とは別のものであり、根本的にはなんら共通のものを持たないと考える。」(p10)


しかし、政策と結びつかないで、何の経済理論か。もし政策と結びつかないでよければ、単なる論理の遊びではないだろうか。

 このように、ツッコミどころもあるが、ケインズ経済学についての概要を知りたいと思う人にはいいだろう。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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