万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉 (講談社文庫) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
・松岡圭祐
前作「探偵の鑑定Ⅱ」で、「探偵の探偵」シリーズは完結したが、「万能鑑定士Q」シリーズの方は、どうももう一作ありそうだと思っていた。これがその最終巻。
今回、莉子が挑むのは「ムンクの<叫び>」盗難事件だ。<叫び>はキャンバスではなく、厚紙に書かれているということだが、何者かによりこれが盗み出された。監視カメラに残っている映像によれば、4つに引き裂かれて。しかし、120時間以内にそれらを取り戻せば、修復が可能だという。
この巻の大きな流れとしては、莉子が、犯人の出したヒントを解明しながら、4つに裂かれた<叫び>の断片を見つけ出すとともに、その背後にある大きなトリックを見破るということだ。
これが最終話らしく、この巻では松岡作品オールスターズが総出演といったところだ。誰が、どんなところに登場するか、松岡作品ファンなら楽しみだろう。ただし、岬美由紀だけはシリーズ全体を通じて登場しない。もし出てきたら、話がすごい方向に行きかねないからだろうか。
ところで、莉子と小笠原との関係だが、この表紙でほとんどネタばれのようになってしまっている。前作で、莉子が小笠原と別れて喜んだファンは多かっただろうが、結局は収まるところに収まったという感じか。
しかし、この結末だと、本当にこれが最終話になってしまったようだ。続けられないこともないだろうが、そうすると、タイトルが「熟女鑑定士」とかになってしまいそうだし(笑)。ただ、「拾遺譚」といった形式で、短編集を出すという方法もあるので、ファンとしてはぜひ望みたいものである。
☆☆☆☆☆
※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。