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ほんの何十年前と違って、日本の台所道具は、種類も数の多さも格段の違いです。そもそも、日本人ほど、各国の料理を自国流に変え、外食ばかりか自宅でも作る国民は少ないのではないかと思います。昔ならご飯を炊くお釜に、みそ汁や総菜を作る鍋がひとつふたつあれば用が足りていたものを、大きな中華鍋、フランスなどの鉄鍋と鍋釜だけでも台所にごった返しています。
すり鉢、私たちはすぐに胡麻をするすり鉢を思い浮かべます。ところがタイやインドなど香辛料を多く使う国でも、ムッターといって石をくり抜いたすり鉢のようなものがあります。するというより、すり潰すといった感覚で使います。
台所道具が少なかったその昔から、日本の台所にずっしりと座っていたすり鉢。我が家のすり鉢も、もう35歳です。東京の中原街道、丸子橋に近い荒物屋さんで買いました。荒物屋も今はもう見なくなったお店です。釘だとか庭ボウキ、ジョウロや鍋釜を扱っていました。このすり鉢、見た目は悪いけど働き者です。 胡麻をする、白和えを作る、我が家のような小さい家庭でもこれぐらいの大きさのすり鉢が必要です。
バーミックスを買った当時は、ごますり機能の付いたスーパーグレンダーで胡麻をすっていたことがありました。はい、あっという間で出来上がります。そのうえ、後片付けもいたって簡単です。すり鉢は、あの溝の間に物を溜めたままでは、次に使う時大変な思いをします。しかも、完全に乾くまでは仕舞えません。でも、あるときバーミックスですった胡麻に香りが少ないことに気付きました。熱がでるので香りが飛んでしまうのでしょうか?
以来、すり鉢の再度登場です。摺り棒の下でジワリジワリ胡麻がすれて行くのが、手の感触で解ります。 最近は伊賀焼きなどで、和えたものをそのままテーブルに出せる見た目のいいすり鉢も出ています。何度も何度も買いたいなと思いました。でも、我が家のすり鉢、我が家がお金がない頃にやって来ました。元気でまだまだ働いてくれています。お金のない頃に買った物は、決して良いものではありません。それでも、手放すことが出来ずにいます。我が家の歴史と一緒に歩んでくれています。