晴れ、4度、福岡
主人は、よくものを無くします。香港、中国の行き来は日常、海外にも行きます。それに夜のお付き合いもお仕事です。眼鏡、携帯はその筆頭。4年ほど前は、眼鏡を年間4つほど作りました。夜帰るタクシーに置き忘れ、時にはスリにだって狙われます。
ひと月ほど前に、「名刺入れを見なかった?」と電話がかかってきました。何処を探してもありません。何処かに置き忘れたようです。名刺入れにはたくさんのカードが入れてあったそうです。銀行のカードなどではなく、ホテルなんかのポイントカード。中身よりは、そのカード入れ買ったばっかりでした。買ったばかりの物をなくすことよくあることです。主人が物が無いと言うと、私は、主人のスーツのポケットからベットのマットレスを上げてあるかないかを調べます。一仕事です。今回の無くし物、主人も諦めよく忘れていました。
日本では、落とし物、無くし物、よく見つかります。電車で無くせば、駅に届けられ、道に落ちていれば、警察に。ほんとにまじめな国民です。私たち、香港のような所に長く住んでいます。落とし物、無くし物は家以外なら絶対に見つからないと信じています。これは確信しているといっても間違いありません。これも国民性です。落ちていれば、頂戴するか、無視するか。お金目の物なら、それこそ出て来ることはありません。
二日前、仕事に出かけたばかりの主人から電話がかかりました。何か忘れ物かな?長いエスカレーターを下って地下鉄の駅に向かっている途中のはずです。やれやれ、と思っていると、意外に晴れやかな声です。
この長いヒルサイドエスカレーターは、飲食街SOHOを抜けています。朝は、静かな街になります。そんな所ですから小さなセブンイレブンがすぐエスカレーターの脇にあります。日本のコンビニのようではありません。それでもマネーカードのチャージや簡単な食べ物を扱っています。私など、ちょくちょく切手を買いに寄ります。主人も、出勤のとき、水を買ったりしているようです。その店に寄ると、顔見知りのおばさんが居ると言っていました。そのおばさんが、2日前、主人に「もしかして。」と言って、カウンターから出して来てくれたのが、件のカード入れ。あり得ないことです。余程嬉しかったのでしょう。繰り返し、おばさんのことを話します。お礼にとお金を渡そうとしても受け取らないので、カウンターに置いて来た、といいます。そして、私にも行ってお礼を言ってくれと。
朝の市場に行く途中寄ってみましたが、いるのはおじさんでした。どんなおばさんかな?
香港の人も、余裕が出て来たのか、いえ、道徳のようなものが少しずつ浸透しているのかもしれません。電車の乗り降りも、降りる人が下りてから乗るようになりました。電車の入り口でぶつかりあうのは、今や中国人です。主人と同じくらい、カード入れが見つかったことより、こんな人が香港にいてくれたことに、喜ぶ私でした。