曇り、6度、70%
小さい頃から年末になると母と一緒に行く店があります。黒豆を買いに行きます。おそらく黒豆以外にもここの豆屋さんにはずいぶん足を運んでいます。以前はもっと賑やかだった福岡の西の繁華街、この街は主人も私も高校まで通った街です。
香港にいるときはお正月用の黒豆は、義母が送ってくれるか主人が出張の時求めて来てくれるか、立派な「丹波飛び切り」を手に入れるのには苦労しました。そして炊き上げた黒豆は、年末までにその年にお世話になった方に配ります。多いときは2キロも炊きました。黒豆に限らず、お豆が大好きです。
昔からずっと変わらない店構え、重たいガラスの引き違いの戸を開けて入ると奥に通じる廊下から犬の声がします。そして、ここの看板娘だった姉妹のどちらかが顔を出します。看板娘さん方、私より数歳お年上、しかも私学の頃の先輩です。町の話、犬の話などなどここにお豆を買いに来たら時間があっという間に過ぎてしまいます。
ところが、先日この店のガラス戸を開けても、犬の鳴き声がしません。奥から出て来たのは、看板娘だった妹さんの方によく似た40歳近いお兄ちゃんでした。話を聞けば、ご姉妹は体調不良、犬たちはご姉妹が家に連れて帰っているとのことです。
2月に本帰国してお豆を買うことがありませんでした。お豆も頂戴します。立派な北海道の小豆、信州の大好きな「花豆」。しかも、香港からレンティル豆やひよこ豆は持ち帰っています。夏を過ぎて手持ちの豆が底をつくと、新豆を夢見てじっと待ちます。ウカウカしていたら年末でした。
お目当てはもちろん「丹波飛び切り」と「手亡白豆」です。豆を見ると心がウキウキします。しかもこの時期はほとんどが新物です。 升で量っての量り売りですから自在にお豆に触れます。新物は心持ち重く感じます。黒豆だけで4種類、「飛び切り」より高い黒豆だってあります。古物です。初めて会うお兄ちゃんに今年の豆の出来を聞きます。さすが豆屋の息子、お母さん達同様に詳しく説明してくれます。「丹波飛び切り」の新物をいただきました。「手亡白豆」はまだ新物ではないとのこと、白あんを作るつもりですが急ぎません。またの機会にします。
日本に帰ると、「レンズ豆」や「ひよこ豆」の入手が困難になるだろうと思っていましたが、この古い豆屋さん、そんな日本では珍しい豆もちゃんと並べています。昨年はなかったので、きっとこのお兄ちゃんの提案かもしれません。そこで、「レンズ豆」の使い方をお兄ちゃんに尋ねました。お兄ちゃん、しっかりした料理知識もお持ちです。 「レンズ豆」も皮付き、皮なしと揃っています。
お豆にしては珍しいオレンジ色が「皮なしレンズ豆」です。
このお店は我が家から歩いて20分、ここに来れば欲しいお豆が揃います。しかも自分が欲しい量を買うことができます。お兄ちゃん、まだうまくありませんが、 昔変わらぬ豆の包み方です。
「丹波飛び切り」の古物の次にお高いのが「信州の花豆」です。お正月の黒豆は炊き上げました。年が明けたら、大好きな「花豆」と「手亡白豆」を買いに行くつもりです。お店は3代目、我が家も親子2代でこの豆屋さんのお世話になります。