雨、4度、84%
あるお宅の夕食の食卓、毎日アップされます。ある日は大きなカマンベールチーズが丸のまま、時には小鯵の押し寿司、クコ入りポトフ。お酒もバーボンあり焼酎ありシェリー酒のティオぺぺあり、バラエティーに富んでいます。きちんと置かれた二膳のお箸に幸せな夕飯の景色が見えて来ます。
「菊花焼売」がそのお宅の夕飯に上ったのは数日前、厚かましくも「作り方を教えてください。」とお願いしました。いただいた作り方、「豚のバラ肉をよく叩き、干し貝柱などを入れ丸めてシュウマイの皮のの千切りを乗せ蒸して辛子を真ん中に。」こういうレシピをいただくと嬉しくなります。大さじ幾つではありません、こなれた作り手の書くレシピです。早速豚肉と焼売の皮を買って来ました。干し貝柱はたんと香港から持ち帰っています。
「肉を叩く」この音は30年前の香港の夕飯時を思い出させました。 香港人の家庭の台所からは「肉を叩く」音が聞こえて来ます。大きな中華包丁、荒削りな木のまな板。中華包丁の重みだけで叩きます。当時はひき肉を売っていませんでした。市場で塊肉を買い汚いひき肉の機械で挽いてもらいます。非衛生的に思った私は、家庭用のひき肉機を買いました。香港人家庭では塊を買って来てトントンと肉を叩くわけです。ひき肉がスーパーでも売られるようになってから、この「肉を叩く」音が夕食の時間から消えてしまいました。肉ばかりかエビやイカも叩きました。私も久しぶりに中華包丁を出して来て、トントン。
よく粘りを出して丸めて、シュウマイの皮の千切りを乗せて蒸すだけの簡単さです。シュウマイの皮は薄焼き卵の千切りを作る時の要領で丸めて包丁で切るといいと思います。ハサミで切るとうまく切れません。 菊花に見立てて、辛子を絞ります。熱熱をガブリ。肉汁がじんわり、貝柱の旨みが口に広がります。干し貝柱は塩分が高いので戻して使うにしても塩加減は少なめに、お酒と胡椒とごま油だけの味付けです。
久しぶりに肉を叩いて気付きます。叩いた肉とひき肉では、歯ごたえ旨味が断然違います。「肉を叩く」大げさな手間ではありません。忘れていた美味しさを取り戻した気分です。このお宅の幸せな夕飯を毎日楽しみにしています。