《か》
『神回』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
東映ビデオによる新プロジェクト“TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY”の第1回作品。
夏休みのさなかもさなか、お盆時でほぼ誰も来ていない高校。
ところが、恵那が話している途中に樹が失神。目覚めるとまた13時に戻っている。
どうやら樹だけがタイムループに陥ったらしい。
このタイムループから抜け出そうと、さまざまな方法を試みる樹。
いつも同じ位置で窓を見上げている用務員が何か知っているのだろうと捕まえてみたり、
樹同様に校内を全速力で走っていた生徒会女子を問い詰めてみたり。
しかしいずれもほかにわけがあり、樹の勘違い。
死ねばタイムループから抜け出せるかと、校舎から飛び降りても失敗に終わる。
やがてヤケになった樹は、恵那を襲うことも考えるようになる。
どうにも状況は変わらないなか、自分たちが少しずつ歳を取りはじめたことに気づき……。
冒頭で今際のきわにいる老人(森一)の姿が映ることから、これが老いた樹であり、
終盤になると、タイムループの映像すべてが彼の妄想であることがわかります。
浮いた噂ひとつもなく、生涯独身でおそらく生涯童貞のままだった樹が願っていたのは、
初恋の恵那と一緒に文化祭の実行委員になって、ずっとふたりきり、教室で過ごすこと。
ちょっとキモかったりもするし、果たして幸せだったのか問いたくなります。
そもそもこのタイムループの中に「神回」と呼べるものがないやんか。
《き》
『貴公子』(英題:The Childe)
2023年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
“The Witch/魔女”シリーズも同監督によるもの。面白いじゃあないか。
マルコ(カン・テジュ)はフィリピン人の母親と韓国人の父親を持つハーフ。
しかし父親は誰かわからず、マルコはフィリピンで病気の母親の世話をしている。
地下格闘技のボクサーとして日銭を稼ぐも生活が向上することはなく、
容態が思わしくない母親のために父親を見つけて治療費を受け取りたい。
マルコがなけなしの金を払って父親の行方を突き止めようとしたところ、
驚くべきことに向こうからマルコを見つけにやってくる。
父親が会いたがっているからすぐに韓国に来るようにと言われたときには
すでにパスポートなど旅に必要なものがマルコに用意されていた。
半信半疑で飛行機に乗り込むと、見知らぬ謎の男(キム・ソンホ)が親しげに接してくる。
韓国に着くと、貴公子然としたその男に追いかけ回されるばかりか、
弁護士を名乗る女性ユンジュ(コ・アラ)に助けを求めると彼女からも命を狙われる。
徐々にわかったことは、マルコの父親はとんでもない金持ちで現在危篤状態。
ガヨンがすべて継ぐという遺書を書き直させるまで父親に死なれては困るハンは、
危篤の父親にマルコの心臓を移植させるためにマルコを連れてきたのだ。
麻酔を打たれて手術台に上げられたマルコを助けにきたのは敵だと思っていたあの貴公子で……。
キム・ソンホが超絶強いうえに可愛いイケメンで見惚れました。
しかも彼はまだ死なないらしく、続編を望みたい。
《く》
『クロス・ミッション』(英題:Mission Cross)
2024年の韓国作品。Netflixにて配信。
アジア2位を自負する凄腕の女刑事カン・ミソン(ヨム・ジョンア)。
幼稚園の送迎バスの運転手を務める夫パク・ガンム(ファン・ジョンミン)は、
多忙な妻に代わって家事のいっさいを執りおこなう主夫だが、
ある日、かつての同僚チャン・ヒジュ(チョン・ヘジン)から捜査への協力を求められ、
彼女の夫で同じく特殊部隊要員のキム・ジュンサン(キム・ジュホン)を救出することに。
てっきりガンムが浮気していると勘違いしたミソンは、上司や同僚の手を借りて追跡。
その過程でヒジュが国家的犯罪の黒幕であることが判明し、ミソンはそのアジトへと向かったところ、ヒジュに捕まってしまう。
一方、騙されていることに気づいたガンムもミソンの危機を知って現地へ。
ガンムとミソンはヒジュたち一味を一網打尽にするべく、奮闘するのだが……。
コメディ映画としてもアクション映画としてもいささか半端な気がするものの、
なにしろファン・ジョンミンですから、彼がいるだけで楽しい。
彼がエプロン着けて家事をする姿は今までなかなかなかったような。
ミソンのチームを見ていると、“犯罪都市”のような仲の良さで嬉しくなりました。
普通に面白い。
《け》
『結婚解消』(原題:Rozwondnicy)
2024年のポーランド作品。Netflixにて配信。
20歳そこそこのときに勢いで結婚したヤチェクとマルゴシアはとっとと離婚して20年が経過。
マルゴシアには再婚した夫と多感な年頃の娘アラがいる。
ヤチェクも恋人と婚約中なのだが、彼女が教会での結婚式を望んでいるらしい。
カトリックには「離婚」という概念がないため、民事で離婚していてもまだ夫婦のまま。
新たに挙式するためには、ヤチェクとマルゴシアがもう夫婦ではないことを証明しなければならない。
婚姻を無効にする手続きはすんなり終わるかと思いきや、
教会としては無効にはしたくないから、ふたりの関係を修復するために神父がああだこうだと言ってきて……。
カトリックの結婚観についてよく知らなかったものですから、目からウロコ。
わりと容易に婚姻無効を認めてくれる神父もいれば、頑として認めようとしない神父もいるそうで。
ヤチェクとマルゴシアを担当することになったのはもちろん後者。
ふたりが会うたびに今の伴侶が嫉妬して、反抗期のアラもマルゴシアに対して冷ややかな態度を取ります。
鉄道の開業式をするために一旦その駅を廃駅にするというのにも驚いて笑ってしまった。
《こ》
『恋人はアンバー』(原題:Dating Amber)
2020年のアイルランド/イギリス/アメリカ/ベルギー作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
アイルランドの片田舎に暮らす高校生エディは、軍人の父親の期待に応えるべく、
入隊試験に合格するよう毎日訓練を欠かさずにいるが、なかなかキツイ。
同級生らの興味は異性とつきあうことしかなく、童貞のエディはからかわれてばかり。
そんなある日、レズビアンだという噂の同級生アンバーがエディに接近。
アンバーはエディに「アンタはゲイだ」と言い、お互いゲイであることを隠すために、
高校を卒業するまで恋人のふりをしようと提案してくる。
自分はゲイではないと言い張るエディだったが、ほかの同級生の手前、恋人がいるほうがイケている。
こうしてふたりはみんなの前でイチャついて見せつつ、不思議な友情を育んで行くのだが……。
保守的で閉鎖的な田舎町では、どんな話もすぐに広まる。
カップルの関係がどこまで進んでいるかなんてことはもちろん、同性愛者であることを教会で告解したら、それも広まるとは。
開き直るアンバーに対して、絶対に認めないエディ。
でも、母親だけはそんな息子に気づいているんですよね。
何も言わずに抱きしめるシーンが好きでした。
息子のほうは、母親に気づかれていることに気づいていないのですけれど。(^^;
エディ役のフィオン・オシェイの顔がちょっと苦手ではあるものの、佳作。