雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

鎮魂の一日

2025-01-17 18:48:35 | 日々これ好日

     『 鎮魂の一日 』

   阪神淡路大震災から 30年が過ぎた
   神戸市を中心に 各地で鎮魂の行事が行われた
   深刻な被害を受けた 方々に比べると
   かすり傷ほどの 被害だったが
   阪神高速道路が 倒れる姿や
   その後数か月間の街の様子は 今も思い浮かんでくる
   街は蘇ったが 人の心は 同じように行かないようだ
                   合 掌

                   ☆☆☆ 

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天竺から来た天狗 ・ 今昔の人々

2025-01-17 08:01:26 | 今昔の人々

     『 天竺から来た天狗 ・ 今昔の人々 』


天竺に大変優れた天狗がいた。
天竺(印度)で学ぶ事がなくなったのか、震旦(中国)に渡ろうとして飛び立ったが、海の水の一筋が、
『 諸行無常 是生滅法 生滅々已 寂滅為楽 』
( ショギョウムジョウ ゼショウメッポウ ショウメツメツイ ジャクメツイラク )
「 万物の無常なることは 必然の法則であるが 生滅変化の法を超越して初めて涅槃に達し 安楽自在の境地を得る・・・涅槃経の一部 」
と鳴っているので、天狗は、「海の水がこのような尊く深遠な法文を唱えるはずがない」と不思議に思い、「この水の正体を突き止めて、邪魔をしてやらねばならない」と思って、水の音を追っていったが、震旦に至っても、まだ同じように鳴っている。

震旦を過ぎて、なお追っているうちに日本の境の海まで来たが、なお鳴っている。
そこから、筑紫の波方(博多)の津を過ぎ、文字(門司)の関まで来て聞いてみると、少し声が大きくなっている。
天狗はいよいよ怪しく思い、水からの声を追っていくと、国々を過ぎて淀川の河口まで来た。さらに大きくなっている声を追って、淀川から宇治川に至り、さらに川上に上っていくうちに近江の湖に入った。さらに大きくなった声を尋ねていくと、比叡山の横川(ヨカワ・東塔、西塔と共に比叡山三塔の一つ。)から流れ出ている一筋の川に入ったが、法文を唱える声はさらに大きくなり耳を塞ぎたいほどである。
川の上流を見ると、四天王や諸々の護法童子がいて、川の水を護っている。これを見た天狗は、驚いて近くに寄ることも出来ない。不審に思いながら隠れて声を聞いていたが、恐ろしくて仕方がない。

しばらくそうしていると、それほど法力がなさそうな天童子が近くにいるので、天狗は恐る恐る近寄って、「この川の水が、このように尊く深遠な法文を唱えているのは、どういうわけでしょうか」と尋ねた。
天童子は、「この川は、比叡山で学ぶ多くの僧の厠からの水の流れ道になっています。そのため、このように尊い法文を水も唱えているのです。それで、このように天童子もお護りしているのです」と答えた。
天狗はこれを聞いて、「声のもとを邪魔してやろう」という心がたちまち消え失せてしまった。「厠から流れ出た水でさえこのように深遠な法文を唱えている。いわんや、この山の僧たちはどれほど尊いのだろうか。されば、我もこの山の僧になろう」と誓うと姿を消してしまった。

さて、その後、この天狗はどのような修行をしたのだろうか。
宇多法皇の御子に、兵部卿有明親王(正しくは、醍醐天皇の第七皇子。)と言う人がいらっしゃるが、その北の方の御腹に宿って生れたのである。
そして、誓いの通り、比叡山の僧となり、延昌僧正の弟子となり、僧正にまで昇られたが、名前を明救(ミョウグ)と申される。
このように、たいそうな霊験をお持ちのお方には、不思議な前世があるものなのだろうか。

     ☆   ☆   ☆
        ( 「今昔物語 巻二十の第一話」を参考にしました )

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