雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

さざ波のように ・ 心の花園 ( 12 )

2012-11-06 08:00:02 | 心の花園
        心の花園 ( 12 )

            さざ波のように


激しく打ち寄せて来るような荒波ではないけれど、ふと気がつくと、心の奥深くで、さざ波のような小さなざわめきが感じられる。
もう終わったことだと、何度も自分自身に言い聞かせてきたし、そのことは、はっきりと自覚している。
しかし、何故なのだろう、この心のざわめきは・・・。
遠い日の想い出とするには、まだまだ時間が必要だというのだろうか。


あの樹の蔭に「アツモリソウ」が見えるでしょう。
見つけにくいかもしれませんが、心の花園には所々で群生しています。
アツモリソウはラン科の花ですが、横を向く袋状の花形が、昔の騎馬武者が背負っていた母衣(ホロ)に似ていることから名付けられました。花名は、源平の悲運の若武者平敦盛から名付けられたもので、今少しがっしりしたものには、熊谷直実にちなみクマガイソウの名が付けられています。
もっとも、アツモリソウの花は白っぽく、クマガイソウの花が赤っぽいのは、源平の旗色が逆のようですが、それはそれで何とはなしに儚く、どちらも野生種は絶滅が心配されています。

アツモリソウの花言葉は、「君を忘れない」です。
どういう経緯の別れであったのかはしりませんが、大切な人の想い出は、さざ波が自然におさまるまで無理をすることはない、とも思うのですが。
コメント
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