雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

今は漕ぎ出でな ・ 万葉集の風景

2025-01-26 08:03:04 | 万葉集の風景

      『 今は漕ぎ出でな ・ 万葉集の風景 』


熟田津に 船乗りせむと 月待てば
       潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな

          作者  斉明天皇 ( 万葉集は「額田王」)

( 巻1-8 ) 
    にきたつに ふなのりせむと つきまてば
            しほもかなひぬ いまはこぎいでな

意訳 「 熟田津(現在の松山市にあった港)で 船出しようと 月を待っていると 潮の具合も良くなってきた さあ 今こそ漕ぎ出そう 」


* この歌の作者は、万葉集では「額田王」となっています。ただ、左注には、山上憶良の「類聚歌林」からの引用として、「この歌は斉明天皇御製」である、記されています。
この歌の持つ雰囲気は、万葉集屈指の女流歌人とはいえ、額田王よりは、天皇の御製と言う方がぴったりくるように思うのです。
但し、斉明天皇の御製として、実際は額田王が作ったということは十分考えられます。

* この歌は、百済からの支援要請に応えるために、斉明天皇自らが出陣し、朝鮮半島に向かう途上、伊予国の熟田津から九州に向かって船出する時の状況を詠んだものです。一行には、中大兄皇子や額田王も加わっていたようで、万葉人の熱い息吹が伝わってくるような作品と言えましょう。

        ☆   ☆   ☆
  


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