『 霊となって子を教える ・ 今昔物語 ( 10 - 24 ) 』
今は昔、
震旦の漢の御代に、賈誼(カギ・前 168 年没)という人がいた。豊かな才能があり、典籍を読んでも何でも理解できた。
その人に一人の男子がいた。名を薪(シン)という。その薪がまだ幼い時に父の賈誼は亡くなった。その為、薪は、未だ典籍を学ぶことがなかった。
薪は、「学問なくして、世間をどのように渡ればよいのか」と心細く思い嘆いて、ある夜、父の墓に行って、諸々の事を語り続けて、泣きながら拝んだ。
すると、賈誼は、子の薪を見て、姿を現わして「お前は、学問を学ぶべきである」と言った。
薪は、「私は、学問を学ぼうと思いますが、誰を師として学ぶべきでしょうか」と尋ねた。
賈誼は、「お前が学問を学ぼうと思うのであれば、このように毎晩ここにやってきて、私を師として学びなさい」
そこで、薪は、その後、父の教えに従って、毎夜、父の墓に行って学問を学び、やがて十五年が過ぎた。そして、このようにして学ぶうちに、学問の道に精通した。
すると、国王はこの由をお聞きになって、薪を召して仕えさせると、本当にその道に精通していた。そこで、重要な人材として登用され、初志を貫徹した。
それから後は、薪が墓に詣でても、賈誼が姿を見せることは無かった。
賈誼が死んだ後、直に対面して子に学問を教え願いを達成させたことは、不思議で有り難き事だ、
となむ語り伝へたるとや。
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