雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

いとうららかなる

2015-02-20 11:00:11 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第七段  いとうららかなる

正月一日、三月三日は、いとうららかなる。
五月五日は、曇りくらしたる。
七月七日は、曇りくらして、夕方は晴れたる空に、月いと明く、星の数も見えたる。
九月九日は、暁がたより雨すこし降りて、菊の露もこちたく、覆ひたる綿などもいたく濡れ、移しの香も持てはやされて。つとめてはやみにたれど、なほ曇りて、ややもせば降りたちぬべく見えたるもをかし。


正月一日、三月三日は、たいそううららかなお天気がよろしいですね。
五月五日は、一日中曇っているのが結構です。
七月七日は、日中は曇っていて、夕方になって晴れてきた空に、お月さまがたいへん明るく、星もはっきり見えるのが結構です。
九月九日は、夜明け前に雨が少しばかり降って、菊の露もたっぷりとあり、花に被せてある綿も十分に濡れて、移り香もいっそうその香りを高めて結構なことです。朝早くには雨は止んでいますが、なお曇っていて、ともすれば降り出しそうなのも、風情があるものです。



なお、九月九日の部分は、菊の着せ綿という習わしで、菊の花に綿をかぶせ、移り香と露の湿りがある綿で身体を拭うと老衰を防ぐという慣わしを描いたものです。
それにしても少納言さま、この章段は、まるで お天気お姉さんではありませんか。

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