雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

殿上より、梅の

2014-11-10 11:00:38 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百段  殿上より、梅の

殿上より、梅の、みな散りたる枝を、
「これは、いかが」
といひたるに、ただ、
「早く落ちにけり」
と、いらへたれば、その詩を誦して、殿上人、黒戸にいと多く居たる、主上の御前にきこしめして、
「よろしき歌など詠みて出だしたらむよりは、かかることは、まさりたりかし。よくいらへたる」
と、仰せられき。


殿上の間から、梅の花が散ってしまった枝を持ってきて、
「これは、どのように御覧になりますか」
と言ってよこしたので、私はただ一言、
「早く落ちにけり」(内宴の席で詠まれた漢詩の詩序からの引用)
と応じましたたところ、その詩を吟じて、殿上人が黒戸に大勢座っているのを、天皇におかれてもお耳になさいまして、
「並の歌などを詠んで返すよりは、このような対処の方が、ずっとすぐれているということだ。うまく応答したものだ」
と仰せになられました。



少納言さまご自慢のエピソードなのでしょう。

この短い文章からだけでも、少納言さまが、当時男性の教養とされていた漢文や漢詩の分野にも明るかったことが窺えます。また、殿上にある教養自慢の貴族たちの間で、打てば響く教養の持ち主として評価されていたらしいことも知ることが出来ると思います。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (笠松)
2020-08-19 11:49:40
コメント失礼いたします。この、清少納言の「早く落ちにけり。」が漢詩の一節であることまでは分かったのですが、どの詩のものなのかが分からず困っています。ご存知でしたらご教授下さい。よろしくお願いいたします。
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申し訳ありません (雅工房)
2020-08-19 19:08:00
Unknownさま
ご指摘の点、まことに申し訳ありませんが、出典を承知していません。
この章段を学んだ時のことを考えてみたのですが、恥ずかしながら、出典を調べてみようと考えた記憶が全くありませんでした。
もう一歩、奥にあるものを考えるべきだと痛感しました。今後の心がけにしたいと思います。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (笠松)
2020-08-19 21:40:41
返信ありがとうございます。私の方でも、またもう少し調べてみようと思います。
返信する

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