『 白い烏を得る ・ 今昔物語 ( 10 - 39 ) 』
今は昔、
震秦の秦の御代に、燕丹(エンタン・戦国時代の燕国の太子。)という人がいた。この人、勇猛で知恵もあった。
幼い時に、国王(後の始皇帝)に従って秦に趣いた。その後帰国しようと思ったが、帰国することが出来ず、父母に会うことも出来なかった。そのため、燕丹は父母を恋い悲しんで、国王に帰国することを願ったが、全く許されなかった。(人質にされていた。)
それでも、さらに泣き悲しんで帰国することを願うと、国王は、「汝、されば白い烏の頭、角が生えている白い馬を我に見せよ。そうすれば、許して汝を帰国させよう」と仰せられた。燕丹はこれを聞くと、泣き悲しんで、天を仰いで願うと、たちまちのうちに白い烏の頭を得た。地に伏して請うと、角が生えた馬が現れた。
これを得て、国王に申し上げると、国王は、「不思議な事だ」と思って、ただちに燕丹を許して帰国させた。
されば、燕丹は願い通りに、故郷に帰り、父母に会って感激し喜んだ、
となむ語り伝へたるとや。
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