マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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曽我町天高市神社の夏越大祓

2016年05月13日 08時50分21秒 | 橿原市へ
橿原市小綱町のノージンサン調査の日だった。

京奈和道路より小綱町へ向かう道すがら。住宅街の一角に行事案内を貼りだしていた掲示板に目がいった。

隣町の曽我町に鎮座する天高市(あめのたかち)神社の行事案内だった。

それには茅の輪を潜る写真もあれば、人形(ひとがた)に息を吹きかけて祓う写真もある。

案内に「国の隆昌・大和の国の安泰・曽我の郷の安全を願い、地域の人々の罪や災いを清々しく祓い清めお幸せにお過ごしいただきますよう、謹んで斎行します」とあった。

天高市神社は平成20年2月に祈年祭・御田植祭を取材したことがある。

同神社で夏越大祓が行われていることは存知していなかった。

数年ぶりであるが、是非とも伺いたくスケジュール・オンした。

斎行される時間までに到着しておきたいと思っていた曽我町の天高市神社。

鎮座地は覚えているが、どこをどう通っていくのかすっかり忘れていた。

迷いに迷って到着した神社に禰宜さんがおられた。

ご挨拶をさせてもらったら、どなたか判らないがやってくると思っていたと話す。

それが私であったのだ。

神さんに導き招かれたようにやってきたようだ。

摩訶不思議なご縁である。



斎庭に立てた茅の輪は夏越大祓に潜る。

平成26年より復活された茅の輪になると話す。

それまでは神職が大祓詞を唱えるだけだったそうだ。

復活を願って氏子に持ちかけた。

賛同されて昨年から始めたという。

材料の茅は曽我川すぐ近くの田に植生していた。

氏子たちが刈り取って、二日前の日曜に竹組をするなどして設えた。

両端に立てている茅の輪は30日の午前中に立てた。

二日間の差がある茅の色落ちでその状況が判る。



この日は雨天。神職も氏子もテント内で斎行される。

夏越大祓は氏子も揃って唱和する大祓詞から始まる。

宮司はかつて祈年祭・御田植祭を取材させていただいたことを覚えておられた。

つい先日に行われた小綱町のすももの荒神さんにも出仕されたという。



その次は禰宜さんによる修祓だ。

幣で茅の輪や氏子を祓ってくださる。

祓った幣はパキパキと折って焼き納めの釜に入れる。

次も同じく禰宜さんが作法をされる。



布を切り裂く「はらえつもの(祓えつ物)」の儀式だ。

布の端を掴んで一気に切り裂く。

これを八回繰り返す。



水平に構えてぐっと引き裂く。

繰り返し、繰り返し、細くする一瞬の作法である。

この日は雨天。雨が降ることからテント内で行われたが、本来なら祓戸社の前で行われる。



禰宜さんは神さんのオヒカリを提灯に遷す。



その火を焼き納めの釜に納めていた諸々に移して火を点ける。

取り出した人形(ひとがた)。



氏子たちが息を吹きかけて穢れを遷した身代わりの人形を手にした禰宜さんはふっと息を吹きかけ釜に落とす。



何度も何度も繰り返す。

締めであろうか、奉っていた黄色いお札のような「疫神斎」の束で煽ぐ。



この間、宮司は大祓詞を奏上し祓い清めていた「浄火焼納祭」。

身代わりの人形を神火で焼納されて天に昇っていった。

歳神さんを迎えた注連縄などを燃やすトンドと同じように天に昇っていく。

罪や穢れを祓う人形は名前と年齢を書いていた。

昨今は車形も登場する時代になったと教えてくださる。



人であれば名前を書くが、車形ともなればプレートナンバーを書くようだ。

「水無月(みなづき)の 夏越(なごし)の祓(はら)えする人は 千歳(ちとせ)の命(いのち) 延(の)ぶというなり (拾遺和歌集)」を唱和しながら茅の輪を潜る。



半年間の罪や災いを祓う茅の輪潜りの神事。



まずは潜って左側に廻る。



戻って次は右廻り。

再び戻って左廻りの3回潜る。



茅の輪は祓具。

最後に正面に向かって拝礼し無病息災を祈る。

地域によっては2回目に潜るときは「思ふ事 みなつきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓ひつるかな」。

3回目に「蘇民将来 蘇民将来」を唱えるところもあるらしい。

前列に座った氏子の茅の輪潜りが終われば後列の氏子に入れ替わる。

茅の輪潜りを終えた氏子たちは茅の輪の両端に立てていた茅をもらって帰る。

家の神棚や門口などに供えつけて魔除けにする人もおられる。



昨年に貰って家の魔除けをした茅はどうしたらいいのか、尋ねる氏子もいる。

トンド焼きのときに燃やすのがいちばん良かろうということだ。

曽我町のトンド焼きは1月14日の夕刻。

曽我川と高取川が合流する川原で行われていることを付記しておく。

祭典が終わって解散された。

その直後から本降りになった。

絶好なタイミングだった。

(H27. 6.30 EOS40D撮影)