昔の暮らし関連展―洗う―は春の企画展の続きでもある。
春のテーマは移動―ヒト・モノ・カミ―だった。
食後は解散するつもりだった。
何気に話した近況はなにも病いだけでなく民俗もある。
午前中に拝観した京都府立山城郷土資料館企画展は伝統行事。
伝統行事には家の風習ごともあれば生活感がある暮らしも含まれる。
その暮らしの写真もときおり撮らせてもらうことがある。
それを発表する機会があった。
奈良県立民俗博物館の学芸員からのお願いだ。
平成27年度の企画展に「昔の暮らし関連展」がある。
5月初めから6月末ころまでの春のテーマは「移動」。
サブタイトルは「ヒト・モノ・カミ」だった。
これに関する写真を提供してほしいという願いに応えて60数枚を選択した。
学芸員は企画展示の列品より写真を選ぶ。
展示した写真は31枚。
ほとんどが行事や風習であるが、なかには彼岸花が咲く田園を行く農車や十津川村などで見られる野猿もある。
また苗代作りに苗箱を運ぶ作業や年賀状を配達する郵便屋さんもある。
暮らしのなかで「移動」を表現した写真である。
2回目の「昔の暮らし関連展」は7月末ころから9月初旬まで。
夏のテーマは「洗う」だ。
これもまた展示協力の依頼があって20枚ほど提供した。
実際に選ばれたのは9枚。
入院前する9日前。
それらの写真をセレクションする打合せをしていた。
私が撮った写真の収蔵庫を探してみれば「洗う」テーマ写真もけっこう出てくる。
意外なものもあって担当する学芸員は展示方法を替えていかなければ・・と云った。
祭りや伝統行事撮影の隙間に暮らしぶりを聞くこともある。
そんな状況も民俗。
特に昨年の夏辺りからは暮らしのなかの民俗、或は風景・景観のなかに見られる生活感あふれる民俗を撮り続けてきた。
発端は「干す」からだ。
そんな話しをしていた昼飯。
午後はどうするか、声をかけあえばそれにしようということになりにけり。
木津川市から直行する大和郡山市矢田町。
目指すは奈良県立民俗博物館だ。
写友人は今年4月から任に就いた学芸員と会いたがっていたが、生憎の休日日。
それは残念だがとりあえず企画展を拝見する。
入院・手術の件は学芸課員に知らせていた。
心配そうな顔でやってくる。
なによりも細くなった身体に顔。
完全復帰はほど遠い。
リハビリ状況を伝えて安心した課員は企画展の列品を解説してくださる。
洗い張りが懐かしい。
竹製の「シンシバリ」は子供のころを思い出す。
祖母は大阪市内中央の生まれ。
呉服屋さんの娘で育った。
戦時下に受けた大阪大空襲。
家屋は落とされた焼夷弾ですべてが焼け落ちた。
祖母の息子は親父。
田舎暮らしのおふくろと結婚した。
焼け出された住民の戦後。
バラック小屋とも云われた市営住宅が住まい。
私は昭和26年の生まれ。
そこで育った。
祖母は普段から着物姿だった。
洗い張りをして家の北側で干していた。
ぶーらぶら揺れる洗いものは「シンシバリ」を挿して引っ張っていた。
「シンシバリ」は下で弓のようになっていた。
張るのは祖母、おふくろだったと思う。
「シンシバリ」を一本、一本外すのが面白かった。
子供ができる作業はそれぐらいだ。
洗いの歴史・文化を知る列品は禊、施浴、入浴に洗濯が主だった。
桶や風呂もある。
シルエットクイズにも出題されているものがある。
それは木製。
というよりも枝を何本かある木の棒だ。
一方は5本の枝があるが、反対側は3本だ。
これは何に使うのか。
また、木の材はなんだろうか。
その正体はドロイモ洗いの道具。
地域によっては「イモコジ(棒)」の呼び名がある。
3本の方を手にもってイモを入れた水貯め桶に5本枝を突っ込む。
手で左右に櫓を漕ぐようにえっちらおっちら・・と云ったかどうか疑わしいが、何度もするうちにドロイモの皮が剥がれる。
イモとイモがぶつかりあって、大部分の皮が剥がれて綺麗になる。
そういう道具だが、様式はもう一つある。
ほぼ平らな角材を2枚合わせて中心部を留める。
留めるといっても十字にして手で広げたり閉じたり、回したりする。
桶に入れたドロイモはこうして皮が剥がれる。
道具を見るのは初めてだ。
体験もなかったので、これは良い勉強になった。
ところで展示協力した写真だ。
一つの群団は禊。
茅の輪括りに人形祓、茅の輪川流しもあれば足を洗う精進潔斎もある。
地蔵信仰にご利益の眼洗いもある。
他に子洗い地蔵もあったが展示スペースの関係でボツになった。
神社境内の石洗いは信仰というよりも神さんに奉仕する作業奉公だ。
特にお気に入りは農家の作業。
一つは苗さんの根洗い。
もう一枚は田植えを終えた苗箱洗い。
田植えや稲刈り作業を撮る人は大勢おられるが、こういう何気ない農作業を撮る人は少ない。
野菜のミズナを田の水路で洗う人の写真もあったがこれもまたスペースの関係でボツになったが、動きが判る写真を見る人が多かったという。
どうやらお役に立てたようだ。
(H27. 8.29 SB932SH撮影)
春のテーマは移動―ヒト・モノ・カミ―だった。
食後は解散するつもりだった。
何気に話した近況はなにも病いだけでなく民俗もある。
午前中に拝観した京都府立山城郷土資料館企画展は伝統行事。
伝統行事には家の風習ごともあれば生活感がある暮らしも含まれる。
その暮らしの写真もときおり撮らせてもらうことがある。
それを発表する機会があった。
奈良県立民俗博物館の学芸員からのお願いだ。
平成27年度の企画展に「昔の暮らし関連展」がある。
5月初めから6月末ころまでの春のテーマは「移動」。
サブタイトルは「ヒト・モノ・カミ」だった。
これに関する写真を提供してほしいという願いに応えて60数枚を選択した。
学芸員は企画展示の列品より写真を選ぶ。
展示した写真は31枚。
ほとんどが行事や風習であるが、なかには彼岸花が咲く田園を行く農車や十津川村などで見られる野猿もある。
また苗代作りに苗箱を運ぶ作業や年賀状を配達する郵便屋さんもある。
暮らしのなかで「移動」を表現した写真である。
2回目の「昔の暮らし関連展」は7月末ころから9月初旬まで。
夏のテーマは「洗う」だ。
これもまた展示協力の依頼があって20枚ほど提供した。
実際に選ばれたのは9枚。
入院前する9日前。
それらの写真をセレクションする打合せをしていた。
私が撮った写真の収蔵庫を探してみれば「洗う」テーマ写真もけっこう出てくる。
意外なものもあって担当する学芸員は展示方法を替えていかなければ・・と云った。
祭りや伝統行事撮影の隙間に暮らしぶりを聞くこともある。
そんな状況も民俗。
特に昨年の夏辺りからは暮らしのなかの民俗、或は風景・景観のなかに見られる生活感あふれる民俗を撮り続けてきた。
発端は「干す」からだ。
そんな話しをしていた昼飯。
午後はどうするか、声をかけあえばそれにしようということになりにけり。
木津川市から直行する大和郡山市矢田町。
目指すは奈良県立民俗博物館だ。
写友人は今年4月から任に就いた学芸員と会いたがっていたが、生憎の休日日。
それは残念だがとりあえず企画展を拝見する。
入院・手術の件は学芸課員に知らせていた。
心配そうな顔でやってくる。
なによりも細くなった身体に顔。
完全復帰はほど遠い。
リハビリ状況を伝えて安心した課員は企画展の列品を解説してくださる。
洗い張りが懐かしい。
竹製の「シンシバリ」は子供のころを思い出す。
祖母は大阪市内中央の生まれ。
呉服屋さんの娘で育った。
戦時下に受けた大阪大空襲。
家屋は落とされた焼夷弾ですべてが焼け落ちた。
祖母の息子は親父。
田舎暮らしのおふくろと結婚した。
焼け出された住民の戦後。
バラック小屋とも云われた市営住宅が住まい。
私は昭和26年の生まれ。
そこで育った。
祖母は普段から着物姿だった。
洗い張りをして家の北側で干していた。
ぶーらぶら揺れる洗いものは「シンシバリ」を挿して引っ張っていた。
「シンシバリ」は下で弓のようになっていた。
張るのは祖母、おふくろだったと思う。
「シンシバリ」を一本、一本外すのが面白かった。
子供ができる作業はそれぐらいだ。
洗いの歴史・文化を知る列品は禊、施浴、入浴に洗濯が主だった。
桶や風呂もある。
シルエットクイズにも出題されているものがある。
それは木製。
というよりも枝を何本かある木の棒だ。
一方は5本の枝があるが、反対側は3本だ。
これは何に使うのか。
また、木の材はなんだろうか。
その正体はドロイモ洗いの道具。
地域によっては「イモコジ(棒)」の呼び名がある。
3本の方を手にもってイモを入れた水貯め桶に5本枝を突っ込む。
手で左右に櫓を漕ぐようにえっちらおっちら・・と云ったかどうか疑わしいが、何度もするうちにドロイモの皮が剥がれる。
イモとイモがぶつかりあって、大部分の皮が剥がれて綺麗になる。
そういう道具だが、様式はもう一つある。
ほぼ平らな角材を2枚合わせて中心部を留める。
留めるといっても十字にして手で広げたり閉じたり、回したりする。
桶に入れたドロイモはこうして皮が剥がれる。
道具を見るのは初めてだ。
体験もなかったので、これは良い勉強になった。
ところで展示協力した写真だ。
一つの群団は禊。
茅の輪括りに人形祓、茅の輪川流しもあれば足を洗う精進潔斎もある。
地蔵信仰にご利益の眼洗いもある。
他に子洗い地蔵もあったが展示スペースの関係でボツになった。
神社境内の石洗いは信仰というよりも神さんに奉仕する作業奉公だ。
特にお気に入りは農家の作業。
一つは苗さんの根洗い。
もう一枚は田植えを終えた苗箱洗い。
田植えや稲刈り作業を撮る人は大勢おられるが、こういう何気ない農作業を撮る人は少ない。
野菜のミズナを田の水路で洗う人の写真もあったがこれもまたスペースの関係でボツになったが、動きが判る写真を見る人が多かったという。
どうやらお役に立てたようだ。
(H27. 8.29 SB932SH撮影)