著者紹介によると、アメリカでもっとも著名な人類学者とある。専門は恋愛の進化、表現、そして化学作用。その専門分野を駆使して分析、検証、おまけに新しい発見まで詳細に述べてある。
化学作用は本書を読んでいただくとして、あの恋に落ちる瞬間の胸苦しさと落ち着きのなさ、誰でも一度や二度の経験があるはず。私も小学校3年生のとき、6年生の女の子に片思いをしたことがある。当然相手にしてくれないと思うから、苦しい時間を過ごした記憶がある。決して美人ではなかったが、なぜか好きになった。
瞬間に火がつく恋とは不思議なもの。大体恋は一目惚れか、後で気がつく恋のどちらかだろう。後で気がつく恋のシチュエーションはこういうこともある。
高校を卒業した新入の女子社員。初々しさはあっても、お色気はちょっと足りない。ところが1年も経過すれば見違えるような女に変わる。化粧がうまくなり、体つきもヒップが大きくなり乳房も盛り上がって、女の匂いがぷんぷんするように感じられる。
最初は、先輩面をして仕事を教えてきたが、朝のコーヒーをわざわざ持ってきてくれたり、残業のあと一緒に近くのコーヒー・ショップでのティー・タイム。
何気ない映画の話から、一緒に行くことになる。そういう段階から、ドライブに誘って人気のないビーチで打ち寄せる白い波頭を眺めながらラブ・ロマンスの映画の話をする。
「あの女優がすてきだったね」
「そうなの? ○○さん、あの女優さんが好きなの?」
「うん、目がキレイだし……」何か考え事をしているようにうつむきながら言う――――「目がキレイだし、それから?」
「いや、女優より君が好きだよ」この一言でお互いが見つめあい、我慢ならないと言う風に優しいキス。これで二人は、逃れられない恋の苦しみに飲み込まれてしまった。このとき男は、心底彼女が欲しいと思う。
これについて「恋愛感情は、ほかの二つの交配衝動と深く絡み合っている。一つは、性欲で、これは性的な満足感を切望する衝動。もう一つは愛着で、こちらは穏やかで安定した、長期間にわたるパートナーとの一体感である」と。
恋は平等であらゆる年代に喜びと悲しみを与えている。この交配衝動――性欲、恋愛感情、愛着――は、90代でもあることを証明されていると言う。
この本には、思い当たる節や参考になるものがたくさん並べてある。
「あの人のことを考えると胸がいっぱい」
「きみと一緒なら死んでもいい。 という感情」
「恋の寿命は12ヶ月から18ヶ月?」などなど。
その中で一つだけ取り上げるとすれば、女性の体型が参考になるだろう。なぜ女性かというと、男の体型は書いていないから。
結論から言うと、ウェストの太さがヒップの70%が理想的らしい。1960年代の英国の棒のように細いモデル「ツィギー」でもこの割合にきっかり当てはまったそうだ。
この体型の女性は、妊娠する可能性も高いという。理由は、しかるべき場所にしかるべき量の脂肪を蓄えているからだという。
逆に、この割合から離れた女性は、妊娠しづらい、高齢での妊娠や流産の危険もある。卵形体型、洋梨体型、棒体型などは、糖尿病、高血圧症、心臓病、ある種のガン、循環器系の病気、また、さまざまな人格障害を患う傾向にあるらしい。ちょっと怖くなる。こうして男と女は、恋をし恋を失いながら人生を終えていく。