都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

自動車ビジネスに未来はあるか? 下川浩一 :ためになります

2009-12-02 20:13:04 | マクロ経済

 金融バブルでローンともにアメリカは車が売れたとある。サブ・プライム・ローンと同じで「買うなら貸すぞ」という方式だ。いわゆるセラー・ファイナンス(Seller financing)のようなもので、上手く行くと、モノは売れるし、ローンの金利は入ってくるというものだが、悪くなると売れないわ、ローンは焦げ付くわということになる。GMとGMAC(金融子会社)がこの関係だ。(不動産でもこのような例は多い)<o:p></o:p>

 次に、トヨタの業績急落は、GMを抜いて世界一の生産台数となるべく、生産しすぎ、そこに景気急変が加わり在庫急増になったのが要因とある。確かにフレキシブルな生産「台数」ではなかった。経営とはこのように人為がからむと分かった。<o:p></o:p>

 更に、日本では試練が技術を磨き、マスキー法対応の排気ガス浄化システムが化学・冶金・電子など関係技術・業界・企業の連帯を生んだとある。これは今後のエコカー開発に役に立つ。更に、Just In TimeJIT)やフレキシブル生産方式を確立し効率と多品種対応の生産方式がある。また、アメリカのように労働者のレガシーコスト(年金、医療保険、高賃金)もない。<o:p></o:p>

 結論として、絶え間ない技術革新と産業間連携を継続しつつ、高級車(先進国)とエントリーカー(発展途上国)の両睨みで環境対応の電気自動車(ハイブリッド含む)が提言されている。<o:p></o:p>

碩学の分かりやすい本で667円と安価でもありお奨めです。<o:p></o:p>

 トヨタの看板方式はもてはやされているが、アメリカではLean Production (無駄のない生産方式)といわれていた。無駄がなさ過ぎて、今回の生産縮小では下請け、二次下請けなど低迷が広がった。連鎖するところは金融のレバレッジと同じだ。ある程度の余裕と顧客の多様化が欲しいがそうも行かないのがこの方式だ。安くなることはいいのだが、給与も安くなるデフレ・スパイラルは生産性の逆循環で、経済理論にないものだ。(つまりは全世界で安くなっているのだろう、金利も低い)<o:p></o:p>

本書の趣旨はまったく同意見だ。懸念店は、日本の生産の比較優位であるが、これを支えた「多能工」が少なくなり、パート・派遣が多くなっていることだ。技能の継承やカイゼンの提案につながらない。これからの産業はコンピュータのような「組合せ産業」だという意見もあるが、そうだろうか。例えば、アッセンブル産業の代表である自転車でも、部品とフレームメーカーの連携とやり取りがあり進んでいる。部品はシマノの寡占化が進んでいるが、フレームは何故かアメリカが元気だ。それはデザインや素材、考え方に提案があるからだろう。電気自動車も、安全性や軽量化、エネルギー補給方式とインフラなどシステムを考える必要がある。(一例として駐車場に電源が必要など)ものを開発する喜び、新しいものに、よりよいものにする喜びが基本だ。<o:p></o:p>

1990年代初め、MITでは日本を手本にした競争力委員会があった。それでもGMは再生せず、アメリカは新規分野として金融工学を取り上げたがまやかしだと分かった。いまこそ、日本は余りある民間資金(政府は赤字)を利用して新規分野の取り込みを行うべきだ。例えば建築では照明の変更、太陽電池の敷設、駐輪確保などに使うものと思えばいくらでも考えられる。<o:p></o:p>

知的な興奮が味わえた。<o:p></o:p>

コメント
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