都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

失われた30年とデフレを考える:後知恵からの分析と今後の都市とオフィス

2022-06-10 02:07:17 | マクロ経済

 先日、阪神梅田本店にてシャンパンを見ていると業界標準のMoet et Chandonが6千円超になっている。バブルの頃の留学時代はアメリカで大体$20位(2,600円位)だった。それが倍以上になっている。コスト・プッシュ・インフレと円安の効果だ

 この30年の我が国の経済は、バブル崩壊からの痛手を受け、リスク低下の守りの経済に入った。金融業界でもリスク性資産からの逃避となった。

そして産業もリスクが少ないがリターンも少ない既存の市場の量的拡大を志向し、新規市場の開拓(イノヴェーション)という質的拡大から逃避した。つまりは、改良はするが、先頭に立って革新はしないという経営だ。

 そのため、既存市場では参入による過当競争があり、「安さ」と「程々の品質」を競った。例えば、スーパー・マーケットは多いが、無農薬の高級品質を狙うスーパーなどマーケットのセグメンテーション分化がなく買物の自由度が低い。

 飲食店は乱立し、世界でもまれな高いサービスとうまさ、低い値段を誇り、その裏では低賃金と長時間労働、不人気業種の問題が発生していた。

安く供給するが同じものという差異のない価格競争を招いた企業の「リスク回避」戦略がデフレの原因だったのだろう。

 方や、60年代に始まった、一括採用・終身雇用・年功序列の3点セットからなる日本型メンバーシップ型(就社)は、Job制という就職に変化が見える。

 変革は、第一にバブル入社組が50代に差し掛かり、人数が多く・給与が高く・能力は昔ながら の層のリストラ(70歳までの雇用延長など可能性懸念 https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2014/03/report_140317.pdf )が必要な企業の内部事情がある。第二にITCの技量が不可欠になり新規人材の雇用という外部事情が企業の年齢入替りの両輪となった。さらに、第三にコロナ禍でのテレワークによる「不要な会議」の明白化がきっかけになっている。

 旧来の3点と新規の3点は相反し、「見限るしかない」改革の始まりとなった

 こうなると、会社にへばりつく「リスク回避」戦略は、じつは「泥船リスク」になると若い世代は感じている。そのため、会社に属するより、職や技能・資格を持ちキャリア・アップを狙っている。

 つまりは、働き手(量)と働き方(質)のパラダイム・シフトだ。やっと新市場開拓のイノヴェーションに人材が向かう。すり合わせの改良技術から、今までなかった革新の技術研究・事業化・産業化に向かう時代だ。幸い、金利は低位安定、円レートも30年前と同じ(我が国には円高恐怖症が未だにある)のため、海外展開にも有利だ。

 そのためには、理工系の学生の研究支援、奨学金の充実などが望まれる。逆に、企業もピラミッド型(滅私奉公の蛸壺人材を評価・昇格)からチーム・プロジェクト型(成果とチーム運営評価)に組織を組みなおすべきだ。面白い仕事と経験・技能取得ができないところに人材は集まらない。

 人材過剰の既存市場からのイノヴェーションに人材移転も必要だ。飲食や物販はオーヴァー・ストアだ。銀行・証券・生保の金融もITCにより人材過多と思う。学び直しの自発的リカレントや企業内リスキリングの教育が重要だ。そのための場として、学びやすい都心の商業施設やホテルなどの教室化も考えられえる。

 かつて銀行は高賃金で社員を集め、社宅に住まわせ、社員運動会への家族参加・表彰などの一家主義だった。(そのため退職すると「会社ロス」があった)

 しかし、いまの若い方はおごりでも仕事の後の飲み会も嫌う。横のつながりとして、同業や同窓などがより重要になる。となると、会話ができる3rd Placeとしてゆったりとしたカフェやフレキシブル・オフィスが「新居酒屋」になると思う。ノート・パソコンとSNSが出合いや会話を変えた。特に、京都では「お宿バブル」のホテルを転用すればいいと思われる。

 都市もオフィスも、イノヴェーション時代向けの提案をしたい

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