Fiscal Policy Under Low Interest Rate :Olivier Blanchard が原題
留学時代、MIT Sloanの教授だったはずだが習った覚えがない。今は、経済の教科書も書く大御所だ( https://en.wikipedia.org/wiki/Olivier_Blanchard )
低金利と財政投資について簡単な式で分析しているのが面白い。中級以上の知識があれば理解できる。
下記の仮定条件において
r*:中立金利(生産が潜在生産量と等しいと仮定したとき、貯蓄Sが投資Iと同じになる、潜在生産量と総需要が等しくなる実質金利)
r :安全金利(r=i(名目金利) -πe(予想インフレ率))
とすると
(r-g)<0の時、財政は黒字となる(成長が金利を上回るため)
なお、ピケティの(r-g)>0はrがリスク性投資(資産収益率)としているため正当としている。
rminは実効下限制限金利としているが、これ以下のr*の場合(マイナス金利など)は金融政策が制限を受け、財政政策が有効としている。
財政政策についてはSDSA(stochastic debt sustainability analysis 確率的債務持続可能性分析)により債務ダイナミクスはs(プライマリーバランス)=S(財政黒字)/Y(GDP)とb(債務比率)=B(債務)/Y
s=(r-g)/(1+g)*b となり、(r-g)<0なら財政赤字でも対応可能となる
我が国の経済については、この30年、財政政策により経済を支えたが、財政赤字が積み上がり、(r-g)<0の財務ダイナミクスを上回るものとしている。金利が上がると、経済成長が低下し(r-g)>0となる懸念を示している。
つまりは、低金利政策によりrを小さくし(r-g)<0となっていたのが実情だ。このため、財政赤字の拡大(利払いの低下)もあったと考えるべきだろう。民間貯蓄の金利所得の損失と政府債務金利支払いの低下という「贈与(所得移転)」だ。r(安全金利)を下回る政策のチェック(ずる)の指摘がないのは残念だ。また、低金利でのゾンビ企業の生き残りもある。
なかなか、面白いが、理論的であり、低金利での生産成長・革新の低下や投機の発生の指摘など民間への影響側面の把握が弱いと思う
今は、低金利が招き寄せる投機(Speculation)、資産インフレなども考えるべきだ、生産Yではないが、インフレの前兆となる