キンドル中毒継続中です。
以前にも紹介した
ラフィク・シャミの本は多数キンドル化されています。
その中から奇抜なタイトルを選びました。キンドルでは鑑賞できませんが、紙本の表紙もきれいです。
スークあるいは
バザールの布のお店に重ねられている色とりどりの布を思い出します。
ものすごく皮肉な内容かと思ったら、貧しい夫婦が他に売るものがないので、馬が扱える夫を馬丁として売り、涙の別れをするという悲しい物語でした。著者が子供の頃、父に連れられてスークを歩いているとき本当に目撃した出来事のようです。
タイトルの物語のほか幾つかの短編と、口述伝承の重要性を語る講演(ドン・キホーテ、サンチョ・パンサも出てきて非常に面白い)が収録されています。
生涯いつも聖書を読んでいた祖父が亡くなったとき、棺に祖父の眼鏡を入れなきゃ、と思っていたのに、それを果たせず、その後、祖母が亡くなる前に「この眼鏡を届けてね」と眼鏡を渡す話は「祖父の眼鏡」という短編です。
某猫学文献のポ子さんとトメちゃの話を思い出しました
既に読んだ「
片手いっぱいの星」では、安物の靴下の中に型崩れ防止用に入れる紙に政府批判の記事を書いて売る「靴下新聞」の話が出てきますが、ラフィク・シャミ自身、学生時代に壁新聞を作り発禁処分になっています。
この本で印象的だったのは次の言葉です。
恐怖を抱く者は毎日死ぬ。恐怖を抱かない者は、ただ一度だけ死ぬ。
グアテマラの人権活動家
リゴベルタ・メンチュの言葉を思い出します。
いつも脅迫されている彼女に取材者が「怖くないですか」と尋ねたのに対し「人間誰でも死ぬのは1度だけです」と答えていました。