「マクロン大統領とフォンデアライデン欧州委員会委員長が北京にやってくることになった。それにショルツ首相も最近、北京にやってきたし、イタリアのメローニ首相もやってきたよ。これをどう考えるか?」
中国政府の外交の司令塔周辺から送られてきたコメントです。
全人代閉会後、一気に外交活動を活発化させた習近平国家主席ですが、そのタイミングを見計らったように、欧州各国が中国との関係修復に乗り出そうとしています。
中国も、米中対立や台湾問題、ロシアに対する対応などを理由に、欧州から厳しい批判を受けてきましたが、ロシア・ウクライナ問題に積極的に関与しようとしている姿勢、特に対話による解決を目指すことをプーチン大統領に合意させた姿勢を受け、風向きが変わってきたように思います。
中国政府としてはアメリカやカナダとの関係修復は容易には望めないと見込み、中国への経済的な依存度がまだ高い欧州各国との関係修復を狙っていると言われています。
欧米諸国とその仲間たちによる対ロ制裁を受けて、世界経済の流れが停滞する中、中国はいわゆるグローバル・サウスの国々での売り上げを伸ばしましたが、国内経済の停滞を再度成長路線に戻すには、欧州からの投資の拡大と、欧州における経済活動の活発化が欠かせないとの認識から、国際社会における対中非難のトーンを緩めるための努力を行っています。
経済的な関係の保持と拡大については、欧州側も同じようなことを望んでいるのか、“経済・貿易・資源”に的を絞って、中国との関係回復に努めようとしているように見えます。
外交ライン・そして経済閣僚間でのやり取りは行われてきたようですが、今回、マクロン大統領やフォンデアライデン委員長、そしてショルツ首相やメローニ首相という首脳級を訪中させることで、習近平国家主席や中国政府の面子を高め、協議の進展を図ろうとしているように思われます。
首脳の訪中のアジェンダを聞いたところ、一応、ウクライナ情勢についての意見交換や、中国による仲介への評価などが入ってはいるものの、協議のメインは経済、特にポスト・ウクライナの世界における世界経済の姿と思われます。
ちなみにウクライナ紛争へのコミットメントという意味では、【中国にロシアへの武器供与を思いとどまらせること】【中国が積極的に事態収拾に乗り出したことを高く評価し、欧州各国も協力の用意があること】が表明されている模様です。
特にフランスのマクロン大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた直後、自らのルートを用いて何度もプーチン大統領との直接会談を行ない、停戦協議の仲介に意欲を示していたこともあり、習近平国家主席による仲介を評価しつつ、自らもその一翼を担いたいとの思いが見え隠れしているように感じます。
とはいえ、マクロン大統領の訪中のメインアジェンダは、中国との経済・通商関係の回復と強化、レアメタルの確保といった経済問題で、それはまたフォンデアライデン委員長も、ドイツ・イタリアの首脳も同じと言えます。