Steve Stiles / Medscape 2023/4/5
身体活動が活発なスタチン服用者にとって、スタチンに関する潜在的な懸念が1つ減る可能性がある。スタチンには筋損傷の原因になるという評判があるものの、新たな試験において、持続的な中強度の運動が筋肉に与える影響は、スタチンにより悪化しないことが示唆されている。
前向き比較試験である本試験では、スタチン治療によって、持続的な運動による通常の筋疲労や筋肉痛の悪化、筋損傷に関連する酵素などのバイオマーカーに対して有害な影響は見られなかった。
本結果は、オランダで毎年4日間にわたって開催される公共の長距離ウォーキングイベントの参加者100人から得られたものであり、そのうち約3分の2がスタチンを服用していた。そして、ラドバウド大学医療センター(オランダ、ナイメーヘン)のNeeltje A.E. Allard氏を筆頭著者として、Journal of the American College of Cardiology誌4月11日号に掲載された。
心血管(CV)リスク因子を有する成人でのスタチンの一般的使用すべてにおいて、スタチンは副作用として過度の筋肉痛や筋損傷を引き起こすと、しばしば非難されている。しかし、そのことに反する、メタ解析および臨床試験に基づくエビデンスが優勢となっており、そのことから、多くの筋症状にスタチンとはまったく関係のない原因があると示唆される。
幅広い健康レベルの集団から得られた今回の新たな結果から、スタチン服用者にとって、「中強度の運動は実施可能で安全である」こと、スタチンは運動による通常の筋症状を悪化させないことが示唆される、と同氏はtheheart.org | Medscape Cardiologyに語った。
また、その運動は特別な量である必要はない。スタチン服用者での定期的な運動は、1日30分のウォーキングを推奨する幅広いガイドラインととくに矛盾しない、と同氏は述べた。
本試験の参加者は、ウォーキングイベントに参加した数万の多種多様な人々を代表しており、年齢、体力レベル、CVリスク因子の数もさまざまであったことから、本試験は非常に広範に応用可能である、と同氏は述べた。参加者には、CV患者、健康な人、「実際は日常的に運動をしていないレクリエーション目的の人」「運動習慣がまったくない人」が含まれた。
本試験には、オランダのナイメーヘンで実施された4日間ウォーキング(大会名:ナイメーヘン国際フォーデーマーチ)の参加者からなる3群が組み入れられた。これは、通常の開催では連続4日間にわたり1日30km、40km、50kmを歩く数万人を集めるイベントである。
試験参加者の内訳は、筋症状があるもののイベントに参加したスタチン服用群35人、筋症状がないスタチン服用群34人、対照のスタチン非服用群31人であった。平均年齢は65~68歳の範囲であった。
スタチン服用群の大多数は、simvastatinまたはatorvastatinを使用していた。スタチンによる平均治療期間は、筋症状がある群では60ヵ月、症状がない群では96ヵ月であった。
評価は、イベントの数日前およびベースライン時と、1日目、2日目、3日目の歩行後に実施した。
ベースラインの簡易疼痛質問票(Brief Pain Inventory:BPI)における筋肉痛のスコアは、筋症状のあるスタチン服用群においてほかの2群よりも高く(p<0.001)、3日間にわたって3群とも同様に上昇した(p<0.001)、と報告では述べられている。簡易倦怠感尺度(Brief Fatigue Inventory)における疲労のスコアも、同様のパターンを示した。
筋肉の損傷やストレスに関するすべてのバイオマーカーは、ベースライン時には3群で同等であり、それぞれ同様に上昇し(p<0.001)、3日目終了時点で有意差はなかった。バイオマーカーには、乳酸脱水素酵素(LDH)、クレアチニンキナーゼ(CK)、ミオグロビン(Mb)、心臓トロポニンI(cTnI)、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が含まれた。
スタチン関連のコエンザイムQ10(CoQ10)値の低下は筋損傷を悪化させると考えられている、と著者らは述べている。しかし、CoQ10値は、本試験のどの時点においても3群間で有意差はなく、また筋損傷、筋症状、疲労に関する測定値とも有意な関連を示さなかった。
スタチン関連筋症状(SAMS)を有する患者は、筋肉痛および筋力低下、さらに「運動が筋損傷を悪化させるという懸念」を原因として、しばしば運動を制限する、と付随論説では述べられている。「それゆえ、心血管代謝の健康を維持し向上させるための基本となる運動が、しばしば避けられたり制限されたりする」。
しかし今回の試験では、「SAMSを発症する患者の多くは、筋肉のバイオマーカーやパフォーマンスの悪化を気にすることなく、中強度のウォーキングプログラムを実施できる」ことがまさに示唆されている、とMount Sinai Heart(ニューヨーク市)のRobert S. Rosenson氏は記している。
本試験の非常に短期の追跡期間では、運動により、筋症状があるスタチン服用群の筋肉の機能はほかの群と比較し改善しなかったようだ、と同氏は述べている。しかし、「SAMS患者において、持続的な運動が代謝のバイオマーカーや運動耐用能を長期的に改善するかどうかについては、本試験からは依然として不明である」。
Allard is supported by a grant from the Radboud Institute for Health Sciences; the other authors have disclosed no relevant financial relationships. Rosenson disclosed receiving research funding to his institution from Amgen, Arrowhead, Lilly, Novartis, and Regeneron; consulting fees from Amgen, Arrowhead, Lilly, Lipigon, Novartis, CRISPR Therapeutics, Precision BioSciences, Verve, Ultragenyx Pharmaceutical, and Regeneron; speaking fees from Amgen, Kowa, and Regeneron; and royalties from Wolters Kluwer (UpToDate); and that he holds stock in MediMergent.
J Am Coll Cardiol, 2023;81:1353-1364, 1365-1367. Full Text, Editorial
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