9時、起床。
鱈子の佃煮でお茶漬けの朝食。
お昼前に家を出て、ゼミ生のSさんが出演するジャズ・リサイタルを聴きに、新宿へ。新宿は大学からは近いのだが、通勤のルートが違うため、めったに来ることがない。人が多いが、年末だからということはなく、いつもこんな感じなのだろう。
会場は「SOMEDAY」というジャズクラブ。新宿一丁目にあり、師走の新宿の街をしばらく歩く。
Sさんのバンド「おまめカルテット」の出番は12:40-13:20。20分ほど前に到着し、前のバンドの演奏を聴く。ピアノの演奏がなかなか見事だ。今回のリサイタルはSwing&Jazz Club という大学のサークル主催のもので、3年生たちの引退リサイタルである。ドリンク券でコーラを、追加でソーセージのピザを注文。
いよいよ「おまめカルテット」登場。Sさんはアルトサックス。いつも教室でみている彼女とはずいぶん雰囲気が違う。いささか緊張しているようだ。
最初の曲「Jig-A-Jug」の演奏が始まった。びっくりした。サックスの音色がとてものびやかで安定している。「おまめカルテット」の「おまめ」とはサークルの中でのSさんの愛称で、それは彼女がとても小柄だからだが、サックスから流れ出る音色はそれをまったく感じさせない。
1曲目が終わって、Sさんのトーク。「斜め前のテーブルに私のゼミの先生がいらしていて、プレッシャーです(笑)」。あっ、トークのネタに使われた。客たちの視線を感じたので、軽く会釈をする。まあ、これで彼女の緊張がほぐれるならばよしとしよう。「先生の講義はとても面白いです。ライフストーリーの社会学とか。ぜひ聴講してみてください」。アホか、論系のオリエンテーションか。場違いな話をしているんじゃない。
2曲目は「Smoke Gets In Your Eyes」(煙が目しみる)、3曲目は「Satch&Diz」。
そしてラストの曲は「Danny Boy」(ダニー・ボーイ)。演奏前の曲の紹介のとき、「この曲は元々はアイルランドの民謡で、ええと、何という名前だったかな・・・」。忘れちゃったみたいである。「ロンドンデリーの歌」だよ。「おまめカルテット」はスローなしっとりと聴かせる曲が得意のようである。
40分の持ち時間はあっという間に終わった。素敵な演奏だった。これで引退はもったいないなと思っていたら、「楽しく演奏できました。これからも(ジャズを)やっていきたいという気持ちになりました」とSさんは言った。拍手が起こった。
「おまめカルテット」の演奏が終わって、そばのテーブルの女性客に挨拶をされた。「娘がお世話になっております」。Sさんのお母様だった。「ガラケー先生のお話は娘からよく聞いております」。「ガラケー先生」ね(笑)。ゼミでガラケー(旧タイプのケータイ)を使っているのは、この夏まで、私とSさん2人だけで、ガラパゴス同盟を結んでいたのだが、秋学期になって、彼女は私の知らないうちにスマホに買い替え、ライン同盟に寝返ったのである(笑)。誰も時代の流れには逆らえない。でも、私はもうしばらく、少なくともいまのケータイが使えるうちは、「ガラケー先生」でやっていきます。
会場にはゼミ長のN君やもう一人のN君も来ていた。演奏の終わったSさんと記念撮影。楽しいひとときをありがとう。
昔蒲田の花屋「サッチモ」のご主人で、ジャズ好きが昂じて、早稲田でジャズ喫茶を始めた「ナッティ」のマスターのAさん、元プロのジャズ奏者でいまはご近所のカフェ「あるす」のマスターのYさん、中学の同級生でジャズマニアのW君、私の周りには「ジャズ」つながりの人が何人かいる。Sさんに「ナッティ」を知っているかと聞いたら、もちろん知っています(行ったこともあります)とのことだった。「ジャズ」は世界をつなぐ。
「SOMEDAY」を出て、新宿駅へ。靖国通りをサンタの一団が、トナカイならぬバイクに乗って走っていた。メリークリスマス。
途中で、脇道を抜けて、紀伊国屋に寄って行く。以下の本と文具(フリクションペン)を購入。
桜木紫乃『蛇行する月』(双葉社) *著者サイン本
宇野重規『民主主義の作り方』(筑摩選書)
蒲田に戻り、「テラス・ドルチェ」で一服。
『en-taxi』40号を読む。面白い読み物がいっぱい。
重松清が山田太一にインタビューしてまとめた「この人についての一万六千字(連載第7回) 山田太一「深くあきらめた人の、なおあきらめない思い」」は小説家らしい視点で描かれた山田太一論。山田の家族的経験については初めて知った。
坪内祐三が石原新太郎にインタビューしてまとめた「石原慎太郎 東京五輪決定について思うこと」。今回の東京五輪開催決定のことだけでなくて、それと関連させながら、昭和の文壇についても話は及ぶ。石原をして「あなた、いろんなことを知っていて面白いね」と言わしめた坪内はさすがである。インタビューというのはインタビュアーの力量に左右される。「こいつは話すに足る相手」と相手に思ってもらえたらしめたものである。
特集「『風立ちぬ』の時代と戦争」も、たぶん面白いのだろうが、私はまだあのアニメ作品を見ていないので、読むのは控えた。
6時過ぎに帰宅。風呂を浴び、夕食。明日は妻が仕事で帰りが遅いので、一日早いクリスマス・イブ的メニューだ。