フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月19日(日) 晴れ (後半)

2018-08-20 21:07:47 | Weblog

 

(承前)

ブックカフェ「栞日」(しおりび)。「高橋ラジオ商会」という看板は以前ここがそういう店舗であったときのものをあえてそのまま残している。

 「栞日」の看板はあえて小さく入り口のドアの脇に置かれている。 

 ドリンクの注文をしてから二階に上がる。

いつ来てもここは格別の空間である。 

いくつかテーブルがあるが、この窓際の机が空いていれば必ずここに座る。

私はアイスジンジャーとドーナツ(プレイン)。Aさんはホットジンジャー。

店主の菊地さんがやってきて「先日、店にいらした卒業生から大久保さんが近々来れられると聞いておりました」と言った。

アリさんの下の娘さんはここで『不思議の国のアリス』が気に入ってしまったんですよね。

私の今日の一冊は、松井啓子『くだもののにおいのする日』(ゆめある舎)。1980年に駒込書房から刊行された「幻の詩集」を4年前に新装復刊したものである。

 

タイトルからは油断しやすいが、甘味な詩ではない。日常の生活の中に漂う非日常的なものを詩人らしい鋭利な果物ナイフで切り取ってみせてくれる詩である。

たとえば「パート」という詩。

 パート
 という種類の梨を
 隣のベッドでむいている
 きのう子供を死産した女が
 きょう梨を食べている

 父親の果樹園からいまもいできたものだと
 ちいさく夫が言っている

 やっぱりうちのがいちばんだと
 ひそひそ妻が言っている
 同室の人びとにふるまうことを忘れて
 むけばむくだけ女は食べ
 残るひとつを見おさめて
 男はバイクで帰っていく

 夜 寝しずまった室内に 低く
 果実のにおいが残っている

タイトルからは外れるが、果物ではなく野菜のことを書いた詩もある。「冬瓜」という詩。

 きょうは思いきって
 とうがん
 というものを煮てみる

 うりでも
 かぼちゃでもない
 飾り窓もない ばかでかい野菜
 部屋に背を向けて
 薄く切りきざんで
 とろ火で煮込む

 一人や二人では食べきれぬものが
 もう鍋ぶたを持ち上げていて
 それなら あれはどこへ行ったか
 いつかの薄暗い台所の土間に
 ごろごろところがされてあった
 あのいくつもの冬瓜は

 かたくりを入れて
 とろりとする間に
 立ったままで牛乳を飲むと
 夕刻は
 西日のように
 少しずつ奥の方まで届いてきて
 結んだねこの首輪のように 足もとで
 ほろっとほどけた

 時刻は5時半、そろそろAさんがお帰りになる時間だ。「栞日」を出て、あがたの森通りを駅の方へ歩く。今日はありがとう。今度、東京にいらっしゃる用事があるときは、私のなじみのカフェにご案内しましょう。 

 Aさんを見送ってから、ホテルにチェックイン。スマホとノートパソコンをWi-Fiに接続する。

8階の部屋の窓からちょうど山の端に沈む夕日が見えた。

 今日はもう一軒、顔を出すカフェがある。ギャラリーカフェ「GARGAS」(ガルガ)。明日明後日が定休日なので今日しかないのである。場所は市民芸術館の後ろ、深志神社の横である、蔵を改築したカフェである。 

二人用のテーブルが2セットとカウンターのみのカフェである。ショップスペースにはこれまでギャラリーで展示会をした作家さんたちの作品(小物)が並んでいる。 

 ここに来たときは必ず注文するチキンカレー。大中小とあるが小をチョイス。カフェ巡りの心得を一つ教えましょう。一つの店で食べすぎないことです(笑)。

付いてくるサラダも綺麗で美味しい。 

さて、2階のギャラリースペースへ。 

展示会は月替わり。8月は山本葵「山で感じたこと」 

山登りの好きな作家さんによる彫金の作品である。 

山頂の雷鳥(ですよね?)。 

私はそんなに山の名前は知らないが、これはたぶん槍ヶ岳ですよね。頂上のちょっと下にある突起は「小槍」(こやり)ですよね。 売約済みの赤いマークがついている作品が多い。聞くところでは、最初の数日でたくさんマークが付いてしまったそうだ。

バッジがたくさん。 

山頂の鳥の3Ðバージョン。 

羽ばたく鳥。

 ひょろりとした草。

今回はこれを買っていくことにする。一輪挿しに面白いかもしれない。

ショップで小池千恵さんのお皿も2枚購入。彼女の作品は大好きだ。  

7時半に「GARGAS」を出る。閉店は8時だが、たぶん私が本日最後の客だろう。

私は来られないが、9月の展示会は大胡琴美「花器、酒器、茶器」展。ショップに彼女の作品(小皿)があったが、とても素敵な色をしていた。

「栞日」は通常は6時までだが、今日は何かのイベントがあったようで、前を通るをその片づけをしていた。明日また来ますね。

コンビニで食料を買って帰る。今日の夜食(どん兵衛きつねうどん)と明日の朝食(たらこクリームスープパスタ)、それからお菓子と飲み物。

風呂を浴びてから、今日撮った写真の整理をパソコンでしながら、たまたまテレビを付けたらやっていた映画『君の膵臓を食べたい』(2017)を見ていたら、これがなかなか面白かった。主役の女子高を演じた浜辺美波という子は、『崖っぷちホテル』にシェフの役で出ていた子だというこいうことに途中から気がついた。この映画で認められたんだな。

映画を見ながら食べたきつねうどんも美味しかった。いつの間に麺がソフトになって、スープが液状になったのだろう。

映画を見終えて、11時半、就寝。普段よりだいぶ早いが、今日は寝不足の上によく歩いたからな。 


8月19日(日) 晴れ (前半)

2018-08-20 10:52:19 | Weblog

8時、起床(目覚まし時計で起きる)。

トースト、サラダ(+サーモン)、牛乳、紅茶の朝食。

9時に家を出てる。今日から二泊三日の松本旅行。今年は3月、5月に続いて3度目である(11月ごろにも行く予定でいる)。

新宿10時発の特急あずさ11号。いつも行きはこれだ。

乗車する前に駅構内のコンビニで水、ティッシュ、メモ帳を購入。水は「いろはす」があるときはいつもこれを買う。ティッシュは「鼻セレブ」(nepica)。駅前でただで配っているものと違ってキメが細かく、カメラらメガネのレンズを拭くのにも使える。メモ帳は旅行中のそのときどきの心覚えを書いておくもので、後からブログを書くときに役に立つ。

車内販売のコーヒーを購入。蓋をしたままでも飲めないことはないが、宇宙船の中で飲んでいるようで、コーヒーを味わうことができない。

朝から少し鼻水が出ていたのだが、車内の冷房のせいで頻繁に出るようになった。ポーチの中から常備薬を取り出す。(松本に着く頃には鼻水は止まった)

12時半に松本到着。卒業生のAさんが改札で出迎えてくれた。彼女は長野県の出身で、卒業後は地元に帰って就職した。松本近郊にお住まいで、前々回(3月)のときにも松本散歩にお付き合いいただいた。ブログへの顔出しはNGなので、気配だけ感じとってください(笑)。

天気はまずまずだ。数日前に気温が一挙に下がり(東京もそうだった)、それから暑さが少し戻ったが、もうあの酷暑とはほど遠い。散歩日和だ。 

ホテルに荷物を預けてから、とりあえず四柱(よはしら)神社に挨拶に行く。また松本にやってまいりました。

挨拶をすませてから中町通りへ。 日曜日だけのことはあり、それなりの人出だ。

 「ミドリ薬局」の前の赤いポスト。昭和の空間だ。

「GRAIN NOTE」(木工と陶器の店)。ここには明日、坂井先生と来よう。

 

「chiiann」(チーアン)。私が松本に来て最初に立ち寄るなじみのカフェである。

路地の奥にある。 

ドアが開け放たれていた。 

(私たちが入ったときはたくさんいた客が引いた後に撮った写真です) 

メニューを持ってきてくださった奥様が「そろそろ大久保さんがいらっしゃるころだと思って、今日はボーダーを着ております」と言った。先日、卒業生のアリさんがご一家で来店され、自分が私の教え子であること、週末に私が松本に来ることを話していったそうである。アリさん、「露払い」のお役目ごありがとうございます。 ちなみに「ボーダー」は以前に私が「奥様はボーダーがとてもお似合いですね」と言ったことを覚えていてくださったのである。

Aさんは3月に私とここに初めてきて、その後、何度かお母様といらしているようで、お店の方とも顔見知りになっている。彼女も彼女のお母様も私の影響でカフェ・ライフの楽しさに目覚めたのである。なんだか自分が「カフェの神様」の伝道師になったような気分だ。

2人ともパスタを注文。ドリンクはリンゴジュース。 

2種類のパスタが使われている。うん、美味しい。彼女も「美味しいですね」と言った。 

ピクルスも美味しい。

これからカフェ巡りをするので、スイーツは明日坂井先生と来たときにとっておきます。 

「coto.coto」に顔を出す。ここは刺繍作家のヤンヤンさんと出会った場所で(たまたま彼女が店内で刺繍の実演をしていたのだ)、以来、ここで彼女の作品(とくに刺繍ポーチ)を買うことが多いが、リトルグラフやマットなども購入している。 

いつもであればヤンヤンさんの作品が常備されているのだが、それが今日はない。5月にクラフトフェアで彼女に会ったとき、9月に出産の予定で、しばらく作品の制作はできなくなるかもしれませんと言っておられた。いよいよ来月、ご出産ですね。安産でありますように。

挨拶代わりにインドからの輸入品という鋳物のフックを1つ購入。 

女鳥羽川の向こう岸に足を延ばす。 

和菓子の「宝来屋」。ここのあんだんご、みたらし団子、草餅などは美味しい。店内では食べられないので、散歩の途中で公園のベンチに腰を下ろして食べたり、ホテルに持ち帰っておやつに食べたりする。

 

 

残念ながら今日はお休みだ。

しかも不定休なので、店の前まで行ってみないとやっているかどうかわからない。 

 でも、お隣がコンフィチュールのお店「シェ・モモ」なので、無駄足になることはない。

最近は松本旅行のお土産はこの店でと決めている。今回も、全種類を試食させていただいてから、3種類のコンフィチュール、メイヤーレモンのマーマレード、キウイとパイン、ルハーブとカシスを購入した。Aさんもキウイとパインを買われた。

 一の橋の近くの「ル・コトリ」は店名が変わった(オーナーシェフは同じ)。

新しい店名は「ラテリエ・スズキ」。蒲田の「西洋料理SUZUKI」とSuzukiつながりだ。ちょうどシェフが外に出てきたので、挨拶をして(向こうも私のことを覚えていた)、明日の坂井先生とのランチの予約をする。 

腹ごなしの散歩もすんだところで、本日2件目のカフェは中通りの「salon as salon」。私がまだ行ったことにないカフェで、Aさんがお気に入りのカフェに案内してくださいとリクエストしたら、ここに案内された。

一階は美容室で、カフェは二階にある。カフェに行くためには美容室のドアを開けねばならず、それが私がここに来たことのない理由である。でも、今日はAさんが一緒だから入りやすい。 

実はAさんもここに来るのは二回目。一回目のときは客は彼女だけだったそうだが、今日はほぼ席は埋まっていた(写真は客が引いたときをみはからって撮ったもの)。窓際の席は下の中通りが眺められる特等席なのだが、今日は先客がいた。 

私は夏季限定のシソジュース、彼女ははちみつレモンソーダを注文。

本棚に「ことりっぷ」(安曇野・松本・上高地)が置いてあったが、表紙の写真が「chiiann」のカステラと紅茶であることをAさんに教えてもらった。松本を代表するカフェの1つになったようである。

さて、もう一軒カフェの梯子をしましょう。 

(後半に続く)