「レディス→メンズ」へのお仕立て直し、というわけで、あらたなるチューニングを施されたうちのボクスターですが、まずTIP-Sのマナーが激変しております。
発進が2速で行われるセッティングなのはじつは90年の911カレラ2で発表された当初から続いた仕様。TIP-Sはボクスターに搭載されているこの08年モデルでおしまい。09からはPDKというツインクラッチを使った、トルクコンバータを介さない全く別のミッションに変更されましたから、18年連綿と続いたなかの最後のモデルだ、ということになります。
発表当初は積極的にシフトはできるが、所詮トルコンである、というのがキホン評価だったと思いますが、そこはポルシェ。というかミッション業界。
ロックアップクラッチのスリップ制御や、ロックアップそのものの素早さ、さらにマニュアルシフトした場合の、トルコン領域を介さないダイレクトシフト等々、スポーツATとして、きっちり磨かれているのを感じます。
このあたり、北海道のU教授に師事すること数年(爆)、ミッションの内部構造に始まり、様々な評価の方法などを叩き込まれたおかげで(それほどでもないが)、にわか知識とはいえ、知ってて乗ることの快感のようなものに目覚めたわけです。
ロックアップが行われてからの、アクセルフィールはMTと同等ですし、全体のフィーリングはむしろMTをうわまわるわけですからして、トルコンATのある意味完成型であったといってよいかも。
また、MTとの比較などを行うから賛否が分かれるわけで、TIP-S搭載の個体はまた別のモデルである、という風にかんがえると非常にスッキリします。
たしか同年代のアウディA4との共用であるといわれていますが、基本が一緒でも制御は全くの別物。
特にポルシェらしいな、と感じるのはブレーキングのGフォースで、落とすギヤを選択できること。
旋回前の強めのブレーキングですと5→2まで落ちることも珍しくなく、その時々の状況で、5→4だったり、→3だったりするのは興味深いです。で、今回、多分気のせいではないと思うのですが、このシフトダウンへの反応が鋭い。
また、特に下り坂で、ある程度の車体の傾斜を感知すると、シフトアップがセーブされるのですが、この度合いが以前よりも敏感に働いている(驚)。
各種センサーへのデンキがちゃんと流れている、というよりも流れ方が変わったおかげかな、と(一部謎)。
アクセルペダルを一定スピード以上で踏み込むか、30%以上のアクセル開度を与えると、瞬時に1速に落ちて、凄まじい加速を行うのですが、まあそんなことはしないのが普通。99%は2速発進です。
が、ボクスターのような絶対パワーや速さよりも、雰囲気やフィーリングを重視するモデルでは、この2速発進はメゲる。ポンと前に出る必要はないが、ダイレクト感のようなものはもっと欲しい、と無い物ねだりをしたくなるわけっす。
このあたりを入庫の折にトクイチオートのKさんとお話ししたのですが、改善できる可能性があるので、トライしてみましょう、ということになったのでした。
結果、すばらしい!きっちり結果がでている!
まず発進時に使う微妙なアクセルオンに対する反応が明らかによくなっている他に、トルクの立ち上がりがボトムエンドから明瞭で、ほんの1200rpm程度のところからはっきりと使えるようになっているのに驚きます。
さらにこの音。なんだか野太いエンジン+排気音に変わっております。
この1200~2000rpm、ギヤでいくと1~2速。というあたりは、ご存知の通り、街中でもっとも多用するゾーンですし、ドライバーもこのあたりのフィールにはかなり敏感なもの。それと意識しなくても、エンジン、タイア、その他の回転フィールを感じているわけっす。
トップギヤでトルクゾーンにぶち込んで、なんて、そもそも違法行為ですしね(どの口がいう)
このボトムエンドのマナーが洗練される、ということはクルマの印象に大きく関わってきます。
今回の整備では、電気とオイルの見直しでこうなった、というお話だったのですが、私程度では理解するなんて、到底無理。アタマで考えてもわかりっこないので、せいぜいカラダで味わっておくといたしましょう(なさけなや)。
それにしてもここの改善は大きいです!「街中はつまらない、ので、山に逝く」、という図式はいよいよ過去のものとなる(ほんとうかい)かな?以下次号。