
★★★★☆
小学館文庫小説賞受賞作。
セクシャルマイノリティである男女の恋を描いた連作短編集。
1話めから、どうでもいい感じの通りすがりのクラスメイトの
名前を明記して、やけに描写をくわしくしていると思ったら、
別の話の主要な登場人物なのだった。
ちょっとわざとらしすぎ?ってくらい各話がリンクしているのだけど、
それはそれでおもしろい。
以前、セクシャルマイノリティの話で
頭に来るほどひどいやつ(浅すぎた)を読んだので、
ちょっと身構えて読んだのだけど、これは好き。
セクシャルマイノリティであることへの苦悩が
明確に押し出されているのは4話めだけで、
その4話めも含めて、マイノリティであることの苦悩よりも
ままならない恋愛に際してわき起こる普遍的な感情を
描いているように思う。
苦悩を主題として前面に押し出していないところに、
「特殊な人々ではない」というスタンスが感じられて
好感が持てる。
文章と透明感のある雰囲気がすごく好み。
4話とも好きだったから、たぶん好みの作家さん。
ほかの本も読んでみたい。