金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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66:戸森しるこ『ぼくらは星を見つけた』

2024-03-25 14:41:24 | 24 本の感想
戸森しるこ『ぼくらは星を見つけた
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
野間児童文芸賞受賞作家の最新作は
「新しい家族」をつくるドラマチックでうっとりする物語。
幸福な予感が幻想的な世界で描かれます。

丘の上の青い屋根のお屋敷に、彼女たちは住んでいました。
ご主人のそらさんと、十歳の星(セイ)。そしてハウスキーパーのシド、白猫のダリア。
そらさんの旦那さんは、十数年前に亡くなった、天文学者の桐丘博士です。
専属の庭師と、そらさんの主治医が出入りするほかは、
現実から切り離されたように静かなところでした。

ある日、「住みこみの家庭教師」という募集を知って、
お屋敷にひとりの男性がやってきます。
それが岬くん。この物語の主人公です。

岬くんは元美容師で、手品や楽器という特技も持ち合わせています。
そらさんは岬くんを家族の一員として迎え入れ、
星は紳士的でユーモラスな岬くんにすぐに懐きました。
けれど無愛想なハウスキーパーのシドだけは、なかなか心を開きません。
不器用だけど本当はやさしく思いやり深いシドに、岬くんは惹かれていきます。

その家族にはいくつか不自然な点がありました。
「本当の家族」を求め続ける岬くんが、奇跡的な巡り合わせで「運命の人」にであう物語。
 
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先輩から借りた本。
 
おとぎ話のような舞台設定や名称に、
現代日本のコンビニやらなんやらが入り込むのがやや気になったけれども、
雰囲気もストーリーも、とっても好み。
 
家族の秘密は明かされていく過程で明らかになる事情が
子ども向けではないのでは……と感じさせるけれども、
これはきっと「大人向けの児童書」なのだろう。
切なくロマンチックで、もう少しこの世界に浸っていたいと思える作品だった。
 
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65:倉島節尚『中高生からの日本語の歴史』

2024-03-25 14:38:22 | 24 本の感想
★★★★★
 
【Amazonの内容紹介】
 
言葉は人びとの暮らしや文化を映し出す鏡です。
日本語という謎に満ちた言語は、
どのようにして私たちが今日知るような形になったのか。
その全体像を明かします。
 
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「言葉は変わるもの。1000年経てば、同じ日本語でも
 すぐには理解できないものになってしまう」
ということは頭では理解していたものの、
古典文法と現代文法 の間にあまりにも大きな違いがあり、
いったいいつどのようにして変わっていったのか疑問に思っていた。
それがこの本を読んでだいぶんわかってきて、すっきり。
 
 各時代の音韻、表記、語彙、文法の変化について説明されていて、
「拗音が直音と異なる音として意識されるようになったのは鎌倉時代から」
とか、
「鎌倉時代あたりから連体形で文を結ぶことが一般化して、
 終止形と連体形が同じ語形になっていった」
とか、
「江戸時代、関東では、打ち消しの『ぬ』の代わりに『ない』を使っていた」
とか、それぞれの要素について、「ここでこうやって変わったのか」ということがわかり、
それらの変化の集合体が現代語なのだ、とようやく体感として納得できた。
そう思うと、古典文法って、
「長い歴史の中のほんの一時期の、整然と説明できる部分」
を切り取っただけのルールなんだなあ。
 
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