金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

249:よしもとばなな 『体は全部知っている』

2006-11-15 13:04:02 | 06 本の感想
よしもとばなな『体は全部知っている』(文藝春秋)
★★★☆☆

旅行から帰ってきたら、いつのまにかブログに広告が入ってて
なんじゃこりゃ。見映えが悪いので消しました。
このところ「森鷗外」「舞姫」でご訪問くださる方が多いのは
高校の定期テストが近いからでしょうか。
残念ながら現代語訳もまともな感想もおいてありませぬよ!


さてさて、『体は全部知っている』は再読。
日常の風景の一部を切り取った13篇からなる短編集。
読むのは二度目なのだけど、「おやじの味」と「いいかげん」の
2篇しか記憶に残っていなかったことにびっくり。
嫌いじゃないし、ばななテイストもしっかりあるのだけど、
1篇1篇が短くてささやかすぎることもあり、
『デッドエンドの思い出』なんかと比べると残るものが薄くて
ものたりない感じ。
「サウンド・オブ・サイレンス」と「いいかげん」は好き。

装画が素敵。文庫版では背景がなくなっちゃってるのね。
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248:岡崎祥久 『首鳴り姫』

2006-11-12 12:52:16 | 06 本の感想
岡崎祥久『首鳴り姫』(講談社)
★★★★☆

確か、角田さんのエッセイかなにかで紹介されていたもの。

二浪の末、大学の夜間部に入ることになった主人公。
首を鳴らす癖のある祖母の家に居候しながら大学に通い、
同級生の冨来子と恋に落ちる。
二人で過ごす部屋を得るため、嫌いな労働を始めることになるが、
いつの間にか心がすれ違っていく。
静かな夜の世界に、恋の始まりと終焉を描く青春小説。

タイトルからなんとなく昔話風の世界を想像していたのだけど、
まったくそんなことはなかった。
バブルの時代が舞台であるらしいのだけど、
特別時代を意識させるようなところはないし、作中世界に入りやすい。
男性のおだやかで淡々とした語り口で綴られているのだけど、
片想いの悶々とした気持ちや、親密になっていく過程でのときめきが
静かながらも鮮やかに描かれている。
待ち合わせて学祭に行ったり、学校帰りに夜の街を歩いたり、
真っ暗な教室で寄り添っていたり……学生時代特有の恋愛の風景に
うわーっと叫び出したくなる。
うらやましい~~!!
だってこういうのって、もう一度再現しようとしたって無理だもの。

そしていつの間にかすれ違い、破綻を迎える関係。
本当に「いつの間にか」で、なにか無力感のようなものを感じてしまう。
祖母と冨来子に共通する「首鳴り」の癖にいったいどんな意味があったのか
いまいちよくわからなかったのだけど、雰囲気がとても好きだったので
ほかの作品も読んでみたい。

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247:穂村弘 『にょっ記』

2006-11-10 14:31:41 | 06 本の感想
穂村弘『にょっ記』(文藝春秋)
★★★★☆

別冊文藝春秋で連載されていた、断片的なひとりごとのような
短い日記。
通勤途中で乗り換えを何度かしなければいけないとき、
こういう短い日記やエッセイはいい……と思ったのだけど、
電車の中だとやっぱり笑いをこらえるのに一苦労。
「うじうじ」がなくてややもの足りないけれど、
軽い気持ちで楽しく読める。

下ネタがちょっと多い?

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246:角田光代 『対岸の彼女』

2006-11-08 13:45:28 | 06 本の感想
角田光代『対岸の彼女』(文藝春秋)
★★★★★

角田さんの小説は正直なところあんまり好きじゃなかったのだけど、
これはよかった!!

公園コミュニティになじめず、主婦としての生活に
わだかまりを感じる小夜子は娘を保育園に預け、
同い年・同じ大学出身だという女社長・葵のもとで
掃除代行の仕事を始める。
仕事にやりがいを見つけ自身を変化させつつも
やがて暗雲が立ち込めてくる小夜子の日常と、
高校時代の葵の物語が交互に綴られる。

学生時代の「女の子」社会の痛み、
大人になってからも依然として存在する女同士の軋轢。
その中で、まったく別の人間であるところの二人が
心を通い合わせていけるかという、いわゆる「友情」の物語。
学生時代と大人の世界が並行して描かれる構成が
後半になってじわじわ効いてきていい。
葵とナナコの別れのシーンでは思わず目頭が熱くなる。
ラストはやや無難にまとまってしまった感があるのだけど、
安心を得られる読後感。

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245:新田太郎ほか『図説 東京流行生活』

2006-11-08 13:21:54 | 06 本の感想
新田太郎・田中裕二・小山周子『図説 東京流行生活』(河出書房新社)
★★★★☆

明治から1980年代までの東京の風俗や町並み、流行商品を
写真とともに紹介。
これもいったい何のために借りてきたのだと不思議なのだけれど、
ビジュアル史料が多くておもしろい。
強制された流行である戦時下の代用品と、テレビの変遷を中心とした
戦後の流行家電の特集が特におもしろかった。
「家具調テレビ」って、わたしが生まれたときには
もうなかったような……?

「竹の子族」の写真はいつどこで見ても笑える。
同じページにある「ローラー」たちの写真が、
模倣の悲しさを含みつつも洗練されているのに対して、
このなんとも垢抜けないファンシーさ!
不思議な時代だったのだなあと思う。

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244:広岡祐 『たてもの野外博物館探見』

2006-11-08 13:00:15 | 06 本の感想
広岡祐 『たてもの野外博物館探見 JTBキャンブックス
★★★☆☆

借りてきていったい何がしたかったのか……自分でも謎。

明治以降の洋風建築を中心に、建築物を保存している
全国の野外博物館を紹介した一冊。
「明治村」は比較的近いということもあって、
小学校の遠足に始まり、何回か行ったことがあるのだけれど、
すごいところだなあ!とあらためて思う。
がんばって名鉄!(ファンです)

「北海道開拓の村」では、映画『北の零年』を思い出した。
あれはサユリストのための映画で、個人的には正直なところ
「どうよ?」という感じだったのだけど、
まったく疎かった開拓史の一端には触れることができたので、
関連する建物の写真でも見て受ける印象がちがう。

しかし建物の野外博物館だけでも、これだけあるのね……と驚き!

コメント (2)
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243:町田康 『爆発道祖神』

2006-11-06 16:26:12 | 06 本の感想
町田康『爆発道祖神』(角川書店)
★★★★☆

これも『だらしな日記』で紹介されていたもの。
気になりつつも読んだことのない作家のひとりだったのだけど、
仕事を機に読んでみることに。

朝日新聞で連載されていたもの。
エッセイのような、小説のような掌編集。
写真と、そこからインスピレーションを得たと思われる文章との
関係がおもしろい。
言葉の選び方とリズムが独特で、
「久しぶりに癖のある文章を読んだ……」
と思う。
著者の世界にくわしかったらもっと楽しめただろうなあと思うと
残念な気もする。
エネルギッシュで憂鬱を吹き飛ばしてくれる一冊。

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242:穂村弘 『本当はちがうんだ日記』

2006-11-06 14:43:38 | 06 本の感想
穂村弘『本当はちがうんだ日記』(集英社)
★★★★☆

世界音痴』でいきなりわたしのハートをわしづかみにした穂村氏。
さっそくほかのエッセイも借りて参りました。
まず、トビラの著者近影(笑顔)で笑ってしまった。
わけがわからない!
『世界音痴』ほどのインパクトは受けなかったけれど、
すっかりファンモードになりつつあるので楽しめました。

「俺について来い」どころか「僕を守って」タイプ、
まさに「うじうじしてかわいい」だ。
本当にうじうじするばかりの男の人は鬱陶しいけれど、
この人は書き方がうまいんだよね。
突き詰めて笑いまで昇華させたり、
自分を冷静に客観視してから文章にしている気がする。
奥さんは「山で襲われたときに僕を守って戦ってくれるひと」
なのかしら。
寝込んだ恋人を放って友人の家に泊まり、
「そろそろ治ったかな」と帰ってくるような人はいやだけど、
同じことをされて文句を言わないのならいいな、別に。

帯にも引用されていたあとがきの言葉、
「今はまだ人生のリハーサルだ…… でも、本番っていつ始まるんだ?」。
似たようなことを日記に書いたことがあって、どきっとした。

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241:デレック・フェル 『印象派の庭と花』

2006-11-02 00:30:31 | 06 本の感想
デレック・フェル/清水道子訳『印象派の庭と花』(日本経済新聞社)
★★☆☆☆

園芸家である著者が、モネ、ルノワール、セザンヌなど
印象派画家の庭の写真と描かれた絵を対比させ、
庭に現れた彼らの美意識について解説を加えた一冊。
それぞれの庭の見取り図や花の配置、理論まで網羅して
紹介されているので、実際ガーデニングをしてる人、
印象派の絵画が好きな人にはたまらないと思われます。
個人的にはそういう方面に関心がないようなので、
残念ながら好み度は★2つ。

庭の写真集もよく見るけど、実は庭が好きなわけじゃないのかも?
と思った。
好きだと思う庭の写真も、庭として好きなわけじゃなく
植えられている花が好きだったり、写真として好きだったりするのかも。
全体の色の調和とか配置の工夫とかいうことに、
自分は全然興味を持っていないのだというのがわかった。
花の絵についてもしかり。
本の中で絵画と写真を並べて対比させているのだけど、
写真のほうがだんぜんキレイじゃん、と……。
花の色合いとかフォルムに忠実なボタニカルアートは好きだけど、
ここに載っている絵にはまったく心動かされず。
モネの睡蓮とかゴッホのひまわりとか、どこがいいのか
実はちっともわからないわたし。
本物を見に行ったとき、まわりが口々に、
「すごいわねえ」「きれいだねえ」
と言っている中で、取り残されたような気分になった。

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240:岡本敏子×よしもとばなな 『恋愛について、話しました。』

2006-11-01 12:15:11 | 06 本の感想
岡本敏子×よしもとばなな『恋愛について、話しました。』(イースト・プレス)
★★★☆☆

ちょっと動揺して、逃避のために
夜中に4冊も読んでしまった……

岡本太郎の養女でありパートナーであった岡本敏子と
よしもとばななの対談集。
岡本太郎関係の本をさがしていたのだけど、近所の図書館には
ほとんどないのよね。

教育のせいで今の若い人たちには打ち込める「好きなこと」がなく、
恋愛至上主義になってしまっている、
そのために雑誌の「モテる方法」に踊らされ、
女の子たちは同じような格好をして「商品」になっている……
という話があったのだけれど、ごもっともです。
昨年、名古屋駅を歩いていたら、黒のベロアジャケットに
フレアスカートというまったく同じ格好をした女の子を立て続けに
4人目撃して、ぞっとしたのを思い出した。
しかし、それも横並び社会であることの反映だろうけれど、
そうして流行の服を着て、恋愛しなきゃ結婚しなきゃという
強迫観念みたいなのは社会全体に強固にあって、
そこからはずれると本当に生きにくいのだと思う。
著者のふたりのように何ごとか自分の道を見つけ、
しかも職業として社会的に認められていないと、
そういう存在は許容されないのだ。

「恋愛に勇気が湧いてくる対話」と帯にはあるのだけど、むしろ
「恋愛とか結婚しなくても責められないためにはどうしたらいいか」を
考えてしまった(ネガティブ!)。
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