金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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248:岡崎祥久 『首鳴り姫』

2006-11-12 12:52:16 | 06 本の感想
岡崎祥久『首鳴り姫』(講談社)
★★★★☆

確か、角田さんのエッセイかなにかで紹介されていたもの。

二浪の末、大学の夜間部に入ることになった主人公。
首を鳴らす癖のある祖母の家に居候しながら大学に通い、
同級生の冨来子と恋に落ちる。
二人で過ごす部屋を得るため、嫌いな労働を始めることになるが、
いつの間にか心がすれ違っていく。
静かな夜の世界に、恋の始まりと終焉を描く青春小説。

タイトルからなんとなく昔話風の世界を想像していたのだけど、
まったくそんなことはなかった。
バブルの時代が舞台であるらしいのだけど、
特別時代を意識させるようなところはないし、作中世界に入りやすい。
男性のおだやかで淡々とした語り口で綴られているのだけど、
片想いの悶々とした気持ちや、親密になっていく過程でのときめきが
静かながらも鮮やかに描かれている。
待ち合わせて学祭に行ったり、学校帰りに夜の街を歩いたり、
真っ暗な教室で寄り添っていたり……学生時代特有の恋愛の風景に
うわーっと叫び出したくなる。
うらやましい~~!!
だってこういうのって、もう一度再現しようとしたって無理だもの。

そしていつの間にかすれ違い、破綻を迎える関係。
本当に「いつの間にか」で、なにか無力感のようなものを感じてしまう。
祖母と冨来子に共通する「首鳴り」の癖にいったいどんな意味があったのか
いまいちよくわからなかったのだけど、雰囲気がとても好きだったので
ほかの作品も読んでみたい。

コメント
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