金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

78:河合隼雄 『泣き虫ハアちゃん』

2017-09-15 20:06:53 | 17 本の感想
河合隼雄 『泣き虫ハァちゃん』(新潮社)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ──。
城山家の、男ばかり六人兄弟の五番目のハァちゃん。
感受性が豊かなあまり、幼稚園の先生が辞めると聞いては泣き、
童謡に出てくるどんぐりの行方を案じては泣いてしまう。
家族に見守られ、友人たちと野山を駆け巡って、
力強く成長してゆく過程を瑞々しく描く。
心理学者・河合隼雄の遺作となった、せつなく温かな自伝的小説。

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わあ、これはいいなあ……!

遺作ということで読んでみたものの、仕事で何冊か読んだ
他の著作があまり好きではなかったので期待していなかった。
読んでみると、思いがけず好みで、よいお話だった。
子どもらしい未熟さを持ちながらも繊細で心優しいハアちゃんと、
彼を取り巻く家族のあたたかさに胸がきゅんとなる。
戦争の気配はあるものの、そこまで色濃くはなく、
家父長制の時代であるけれども、
リベラルで教養人らしいお父さんと品よく優しいお母さんが
子どもたちのサンタさんに対する疑惑を晴らすべく
対処するお話がユーモラスで可愛らしく、印象的。
おすすめ!


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映画:『エル ELLE』

2017-09-14 15:32:11 | 映画の感想
映画:『エル ELLE』(ポール・ヴァーホーヴェン監督)
★★★☆☆

【シネマトゥデイの内容紹介】
ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)は
ある日、自宅で覆面の男性に暴行されてしまう。
ところがミシェルは警察に通報もせず、
訪ねてきた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)に平然と応対する。
翌日、いつも通りに出社したミシェルは、
共同経営者で親友のアンナ(アンヌ・コンシニ)と
新しいゲームのプレビューに出席する。

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ポスターの煽り文句から、
「ヒロインが犯人に復讐する」、あるいは
「実はヒロインが犯人」等の展開を予想してたんだけども、
なんだか思っていたのと違う。
途中で「あ、これ、フランス映画か」と気づいて
あきらめモードに……。

共感を得にくいヒロインの性格に、
暴力と流血、ぶっ壊れた倫理観……と不快要素満載で
一般受けはしないだろうけど、
個人的にはそんなに嫌いじゃないよ。

大量殺人鬼の娘であるという設定は、
もう少しストーリーに関わってくるかと思っていたので
拍子抜けしたけど、ヒロインの驚くべき性格の悪さ、
警察への不信感、他者への対応の背景としては
機能していたのかな。
ストーリーは散漫で、どこへ話が向かっているのかわからなかったけど、
「犯人が誰か」という謎で興味をひきつけることには成功している。

ヒロインも相当な性格だが、一番怖いのは犯人の妻。
知ってたのかよー!

ヒロインは結構な歳なんだけども、
おしゃれできれいなせいか、
性愛がクローズアップされてても不快でない。
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大河ドラマ「おんな城主直虎」#36

2017-09-10 20:50:29 | 大河ドラマ「おんな城主直...
大河ドラマ「おんな城主直虎」#36

えええええ!?!?!?

何だこれ、何だこれ……??

最終回みたいな終盤の超展開に動揺を抑えきれない。
近藤の「クララが立った!」も、
高瀬の「中野のおじさま」発言(高瀬にとっては「おじさん」なのね)も、
あやめさんの「嫁ぎたい」も、
龍雲丸のプロポーズですべてが吹っ飛んでしまった。

いや、まだ9月だし、
「幸せになったと思った? 残念! 悲劇はこれからだぜ!!」
になると思ってるけどね。
井伊家再興が実現するのはわかってるから、
実際、直虎が龍雲丸と結婚するってことはないと思ってるけどね。

ああ、何だろう。
「良かったね」と「それは許さんぞ!」の両方の気持ちが
同じくらいの強さで胸にある。
家のためだけに生きてきた直虎が、枷を全部外して
「おとわ」というひとりの女として幸せに生きていけるのなら
それは祝福すべきことだし、「ああ、よかったね」と思えるんだけど、
直親でも政次でもない男と結ばれることには断固反対だ!
そう言うと、ふたりとも死んでるから、
つまり一生独身でいろ!ってことなっちゃうのよね。
非常に複雑な気持ち……。

毎週気持ちが振り回されすぎて、日曜日の夜は落ち着いて眠れないよ!
コメント (2)
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77:森沢明夫 『津軽百年食堂』

2017-09-08 19:37:02 | 17 本の感想
森沢明夫 『津軽百年食堂』(小学館)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

百年の刻を超える「こころ」の物語

ふるさと「弘前」を離れ、孤独な都会の底に
沈みように暮らしていた陽一と七海。
ふたりは運命に導かれるように出逢い、惹かれ合うが、
やがて故郷の空へとそれぞれの切なる思いを募らせていく。
一方、明治時代の津軽でひっそりと育まれた
賢治とトヨの清らかな愛は、いつしか遠い未来に向けた
無垢なる「憶い」へと昇華されていき……。
桜の花びら舞う津軽の地で、百年の刻を超え、
営々と受け継がれていく<心>が咲かせた、
美しい奇跡と感動の人間物語。

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それだけでドラマを感じさせる表紙がいいねえ……
と思いつつ、長い間読まないままになっていた本。
というのも、以前に読んだ『青森ドロップキッカーズ』で
この作者さんとは相性がよくないと確信していたから。
明確な欠点があるわけじゃなく、単純に合わない。

その確信は当たっていた……。
お父さんと息子の関係だとか、好きなところもあったんだけど、
どうもしっくりこない部分の方が多かった。
視点人物が頻繁に入れ替わったり、過去と現在が交互に描かれたりする
構成にあんまり意味が感じられなかったのと、
主人公を好きになれず、彼女とのドラマに興味が持てなかったのとで、
ところどころ飛ばし読みしたい衝動に駆られてしまった。
過去と現在のリンクもいまいち機能していなかったように思うので、
そこにスポットをあてて描いてくれたら大好きな話になったかも。

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大河ドラマ「おんな城主直虎」#35

2017-09-03 20:51:14 | 大河ドラマ「おんな城主直...
大河ドラマ「おんな城主直虎」#35

「何じゃ、但馬は生きておったのか……」
でまたちょっと泣いちゃった。
次世代に受け継がれる政次の教えと、
井伊ファミリーの但馬ごっこ(笑)。

いい人だけど井伊を守らなかった鈴木は討ち死にして
まだ幼い嫡子が出陣することになり、
政次の死の元凶たる近藤は深手を負って
小刀を持った直虎に殺されるのではないかと怯え。
頭を救うことができた直虎は、
恨みを抱く近藤を助けることができる程度には落ち着き、
堀川城の一件で茫然自失だった方久も
久しぶりの「カーン!」で金の亡者ぶりを取り戻し。
きれいごとではなく、自然な流れで
喪失から立ち直っていく様子を描いたよい回であったよ。

酒井に強く出られない家康も、
何とか自分の考えを実現することに成功し、
斜陽の帝国を背負わされた氏真も家康のもとに下ることで
肩の荷が下りたとのこと。
(しかし氏真の気持ちはわかるけど、
 井伊が今川にひどい目に遭わされ続けたことを思うと複雑な気分……)
あれこれが片付いて「第〇部 完」みたいな雰囲気。

政次派としては、龍雲丸と直虎にロマンスの気配がちょっとでも漂うと
もやもやしてしまうので、薬を口移しで飲ませるシーンに
色っぽい演出がなくてちょっぴりホッ。
和尚様が口移しで薬を飲ませたのだと説明され、動揺する龍雲丸は、
意外におぼこくて笑った。
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映画:『ココ・アヴァン・シャネル』

2017-09-02 22:24:20 | 映画の感想
映画:『ココ・アヴァン・シャネル』(アンヌ・フォンテーヌ監督)
★★☆☆☆

【シネマトゥデイの内容紹介】

孤児院で育った少女時代を経て、
酔った兵士を相手に歌うナイトクラブの歌手となった
ガブリエル(オドレイ・トトゥ)。
その一方、つつましいお針子として、
田舎の仕立屋の奥でスカートのすそを縫う日々に甘んじていた彼女は、
将校のエティエンヌ・バルサン(ブノワ・ポールヴールド)の愛人となり、
退屈な暮らしを送ることに……。

****************************************

うーん。
作業しながら流し見していたので耐えられたが、
映画館で見てたら腹を立ててたかも?

この人の人生を描くのなら、やっぱり
ファッションを中心にしなきゃいけないと思うんだけど、
その比重がかなり軽め。
彼女の生み出すものがどれほど斬新だったか、
人々を魅了したかの描写が薄いので、拍子抜けした。
もちろん、周りとのギャップというのは見ればわかるのだけど、
強調されていない。
個性的なドレスを着てパーティに登場し、踊っているのに、
周りの人、だれも彼女の服を見てないよ……。

ファッションでのし上がっていく部分は省略されて、
恋愛中心になっているんだけども、
最愛の相手であったというボーイとの関係は
そこまで掘り下げてない気がする。
ヒロインのココはかなり身勝手でずうずうしく
(そうでなければのし上がってはいけないと思うけど)、
ボーイも耳に心地よいことを言いながらも
結局彼女を遊びの相手としか見ていないわけで、
ふたりの恋にまったく共感できず、興味がわかなかった。
互いに身勝手に利用し合いつつも
それなりの親愛の情が生まれているような、
バルサンとの関係のほうがまだ理解できた。


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76:佐々木睦 『漢字の魔力』

2017-09-02 17:25:04 | 17 本の感想
佐々木睦 『漢字の魔力 漢字の国のアリス』(講談社選書メチエ)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

福を招き、魔を除く。新しい時代の到来を告げ、
コカ・コーラを「可口可楽」と絶妙に書き表す。
この、融通無碍で摩訶不思議な漢字の世界にようこそ。
多彩な資料を渉猟する著者がガイドする、文字が織りなすワンダーランド。

*************************************

先に読んだ『大人の漢字教室』みたいな本かと思って手に取ったのだけども、
「中国における漢字」といった面が強く、
よりディープな世界を楽しめる。
中華街でよく見かける、漢字のような絵のような不思議な文字の
正体に触れられていたのが特によかった。
「福」がひっくり返った文字は「タオフー」と読み、
「倒」と「到」が同音であることを利用して
福が来ることを願うおまじないなのだそう。
昔の漢字占いにはツッコミどころ満載だけども、
そういう風習があるというのは興味深いし面白い。

「可口可楽」は大学の中国語の講義で初めて知って感心したけど、
二年間中国語をやっていたのに、覚えているのはこの「可口可楽」と
「卡拉OK」=カラオケ、「美国」=アメリカ、くらいのもので
まったくものにできなかったわ……。



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