金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

40:永井路子『銀の館〈上〉』

2023-03-18 23:51:53 | 23 本の感想
永井路子『銀の館〈上〉』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
室町後期、将軍足利義政の室として、その権勢をほしいままにした日野富子。
しかしその実像は意外なものであった。
富子と当時の庶民の姿を生き生きと描く長篇。
 
****************************************
 
上巻は富子の輿入れから、いよいよ応仁の乱、というところまで。
小中学生の時期に触れてきた創作物に、
富子vsお今にフォーカスしたものが多かったせいで、
何となくお今を中ボスみたいに思っていたのだけれども、
実際は、結構早くお今は排除されてたんだよね。
 
この作品では、富子にとっての最大の障害はお今ではなく、
世の中のことにはもちろんのこと、誰に対しても興味を持たない
夫・義政の無責任&無関心。
 
奔放で開けっぴろげ、身一つで生きている軽やかなゆうかの姿が
印象的。
……なんだけど、『乱紋』でも『姫の戦国』でも、
永井先生のオリキャラは、意味ありげに登場して、
メインのストーリーにたいして関わらず退場したからな……。
ゆうかも蘭之介も、それなりに活躍はしているが、
現時点ではあくまでも社会や政治的な状況を説明するための
背景でしかない感じ。
 

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39:栗沢まり『あの子のことは、なにも知らない』

2023-03-18 23:48:57 | 23 本の感想
栗沢まり『あの子のことは、なにも知らない』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
昨日、クラス全員の高校合格発表が終わった。
教室にはクラスメイトたちの弾む声が響いている。
秋山美咲が目をやると、窓側のいちばん前の席で、
ひと月ほど前に転入してきた渡辺和也がいつものように机の上につっぷしている。
美咲は和也に「ねえ、持ってきた?」と声をかけるが、和也はぴくりとも動かない。
和也は遅刻常習犯、気に食わないことがあるとすぐキレる。
クラスの誰からも無視されているような存在だ。
美咲はクラスの委員長であり、卒業祝賀会の委員もつとめている。
卒業祝賀会は生徒が主催して親を招待するのがならわしで、
スライドショーと親への感謝の手紙贈呈は祝賀会の中でもいちばん盛り上がるのだ。
和也はそのスライドショーに使う幼少期の写真を、何度いっても持ってこない。
しかも、やさしく声をかけたきょうも、また無視だ。
「感動を呼ぶ祝賀会を完璧にしあげなければ」ということを正義と思う美咲には、
和也の態度は許しがたい。そして理解できない。
わたしは「真のリーダー」として、学年主任の前田先生からも認められているのだ。
和也にはぜったいに写真を持ってきてもらわねば──。
同じ祝賀会委員のひとり、本間哲太は、学校で見せない和也の顔を知っていた。
和也の父親とふたりの生活は、食事もろくに食べられない暮らしなのだということを──。
写真を持ってこない和也を「甘やかしてはいけない」と思う美咲。
一方、哲太は「事情があるはずだ。俺は和也のことをもっと知りたい」という。
そんなとき、和也が児童相談所に保護されたという。
そして、祝賀会委員たちはしだいに和也の置かれている状況を知ることになり、
それぞれが迷いながら自分のあり方も見つめ直す。
「正しいけれど、何かが違う」「正しいけれど正しくない」
そういったことが世の中にはいくつも岩のようにごろごろと転がっている。
答えは見つかるのか、見つからないのかわからない。
でも、正しいか否かを考えることを放棄したくはない──
そう考える中学三年生の姿を、貧困家庭に生きる子どもたちの姿を描いたデビュー作
『15歳、ぬけがら』で各方面から高い評価を受けた栗沢まりが描く。
 
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2023年度東海中学校で出題。
他にもいろんな学校で使われていそう。
 
虐待や貧困を扱っているのだけれども、
「たいして親しいわけでもない自分が、同級生のその事実をどう扱うか」
というところにフォーカスしている点が珍しいかも。
児童文学の枠の中で問題に真摯に向き合おうとする姿勢を
感じる作品だった。
 
主人公の一人は、裕福な家庭に生まれ育ったと思われる優等生の女の子。
自分が受け取っているものを同級生の皆が受け取っていると信じて疑わず、
「親に感謝するのは当然」となんのためらいもなく言っていたところから、
いろんな家庭があるということを知り、
「一律に感謝を強いていいのか」と悩み、誠実であろうとして戦う。
一部は意志を通せるものの、結局大人に屈してしまうところ、
わだかまりのあった同級生と都合良く理解しあったりしないところがよい。
 
しかし前田先生やお母さん、もう少し取り繕おうぜ??
理解のあるふりをしながらボロを出していくほうが
大人のいやらしさが表れていていいと思う。
 

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38:瀬尾まいこ『夏の体温』

2023-03-12 22:16:23 | 23 本の感想
瀬尾まいこ『夏の体温』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
「出会い」がもたらす「奇跡」を描いた全3篇
 
【収録作品】
 
「夏の体温」
「魅惑の極悪人ファイル」
「花曇りの向こう」
 
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これも先輩から借りた本。
 
2作目の「魅惑の極悪人ファイル」がユーモラスで楽しく、
何度も笑ってしまった。
他の2編はそれほど好みではなかったのだけども、
これが大変面白かったので、★4に。
 
「夏の体温」は2023年度滝中学の入試で出題。
病気で入院している小学生立ちの交流の物語で、
いかにも国語の問題で出題されそうな感じ。
「花曇りの向こう」は中1の教科書に使われているそうで、
かなりあっさりしたお話だった。
 

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34-37:最近読んだ本

2023-03-10 11:29:29 | 23 本の感想
 多良美智子『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』
 
「仕事はしなきゃいけないんだけども、一日中フリー」
という日の過ごし方をもう少しうまくできないかな~、
と思っていたので、
「一日のスケジュールを一定にする」
というのが参考になった。
会社勤めの人や専業主婦の人の「一日の過ごし方」はいっぱいあるが、
わたしの生活に近い例はあまりないのだ。

 稲垣栄洋『面白くて眠れなくなる植物学』
 
同じ筆者の本を続けて読んでいる。これも面白かった。
「面白くて眠れなくなる」シリーズ、
「いや、たいして面白くない……」と思っていたのだが、
これは本当に面白い。
 

三條凛花『もっと動ける私になる! 魔法の家事時間割』
 
再読。
時間に融通がきく仕事だと、かえって時間の使い方が難しい……と
常々感じている。
時間割を作るのは参考になった。
 

 『東海の自然さんぽ スニーカーであるく24コース』
 
公共交通機関を使っていくときのルートや所要時間が書いてあって親切。
範囲は愛知・岐阜・三重・静岡・長野・滋賀。
愛知県内でも、公共交通機関が発達していない地域だと、
関西に行く方が断然速い、となってしまう。

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33:吉岡乾『なくなりそうな世界のことば』

2023-03-10 11:09:54 | 23 本の感想
吉岡乾『なくなりそうな世界のことば』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
世界で話されていることばは、およそ7000もある。
しかしいま世界では、科学技術の発展とともに、
数少ない人が限られた地域で用いている
「小さな」ことばが次々に消えていってしまっている。
本書は、世界の50の少数言語の中から、
各言語の研究者たちが思い思いの視点で選んだ
「そのことばらしい」単語に文と絵を添えて紹介した、
世にも珍しい少数言語の単語帳。
耳慣れないことばの数々から、
「小さな」言葉を話す人々の暮らしに思いを馳せてみてください。
 
****************************************
 
先輩から借りた本。
 
『翻訳できない世界のことば』と同じシリーズの、大人向けの絵本。
金城学院中学2023年度入試で出題。
 
言語って本当におもしろいと思うのだけれども、
その面白さを人にわかるように伝えるのは難しい。
ここ十年くらい、仕事でそれを伝える方法について、
試行錯誤しつつ考えている。
 

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32:一穂ミチ『光のとこにいてね』

2023-03-10 11:07:16 | 23 本の感想
一穂ミチ『光のとこにいてね』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
『スモールワールズ』を超える、感動の最高傑作

たった1人の、運命に出会った

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。
着るものも食べるものも住む世界も。
でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。
彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。
ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。
どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語
 
****************************************
 
めずらしく新しい本を。
この作家さんも、BL出身なのか~。
最近、BL出身で活躍されている作家さんが多いなという印象。
 
幼いことに出会った二人の女の子の、
友情や恋愛を超えた強い結びつきの物語。
二人とも母親のために苦しめられていて、
その呪縛の克服も一冊を通したテーマになっている。
子ども時代の母親の存在って大きいものね……。
母親の支配下から逃れることができない子ども時代に出会い、
強烈に惹かれあって、離別と再会を繰り返す二人。
正直、「そこまで気を回さなくても……」と思うところが多く、
もどかしいのだけども、
過剰なほどの忖度も、思いやりからくるものなんだろう。
 

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31:成田奈緒子『高学歴親という病』

2023-03-06 23:01:43 | 23 本の感想
成田奈緒子『高学歴親という病』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
山中伸弥氏絶賛!
話題の脳科学者が解き明かす「高学歴親の子どもが引きこもる理由」

「干渉・溺愛・矛盾」子育てに失敗する親には共通点があった。
 
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先輩から借りた本。
 
あるあるあるあるあるある……!のオンパレード。
 
子どもが失敗することを恐れて先回りしてしまう、というのは、
そのリカバリーに付き合えるほど時間的・心理的な余裕が
親にないというのもあると思う。
親がリカバリーに付き合う必要がない、と割り切ることも
難しいだろうしね……。
世間はフォローしない親を非難するもの。
 

 
 
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30:珠川こおり『檸檬先生』

2023-03-06 22:50:58 | 23 本の感想
珠川こおり『檸檬先生』
 
【Amazonの内容紹介】
 
第15回小説現代長編新人賞受賞作。

世界が、色づいている。

小説現代長編新人賞、史上最年少受賞!
十八歳の作家が放つ、鮮烈なデビュー作。

<内容紹介>
私立小中一貫校に通う小学三年生の私は、
音や数字に色が見えたりする「共感覚」を持ち、
クラスメイトから蔑まれていた。
ある日、唯一心安らげる場所である音楽室で中学三年生の少女と出会う。
檸檬色に映る彼女もまた孤独な共感覚者であった。
 
****************************************
 
先輩に借りた本。
 
冒頭の1ページを読んだだけで
「ぎゃー! ティーンズの書いた青い文章!!」
と恥ずかしくなってしまった。
これは別に悪いことじゃなくて、今しか書けない文章だろうし、
きっとこうした感性に共感し、救われる若い読者もいるだろうから
どんどん書いてほしい。
(そう考えると、大人が書くYA文学って、「大人が読んでほしい物語」であって、
  読者層が読みたいものとはあまり重なっていないのだろうな……)
 
わたし自身は、最初の「春」の章だけでギブアップ。
あとは流し読みになってしまった。
(よって好み度★はなし)

「これはエンタメじゃない、純文学」と言われれば仕方ないのだけども、
ままならない苦しい状況を描くにしても、
もっと「読ませる」方法はあるのでは……と思う。
でも、世間では「選ばれし者」みたいにポジティブな扱いを受けがちな
共感覚の苦しみを描いているところ、
主人公が先生のおかげで「普通」の世界と
それなりにうまく付き合っていけるようになったのに、
それによって孤独になった先生がわざと主人公の心に爪痕を残すような形を選んで
彼の世界から去ったところがよいと思った。

 

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大河ドラマ「どうする家康」♯9

2023-03-05 21:18:37 | 2023年に見たドラマ・アニメ

うおー! 松ケン@本多正信、よかったよ~!!

演技力があると、ちゃんと面白くなるじゃないか!!

 

突然差し挟まれた陳腐な「悲しい過去」エピソードとか、

家康が「お前たちを信じる!」と言っただけで

急に松平勢が優勢になる雑展開とか、

「三河一向一揆は信玄の陰謀!」みたいなアホ展開とか、

もう「恥ずかしくて見てられないよ~」って感じなんだけど、

とにかく松ケンは良かった。

妻子を取り戻すために戦をしたと正信に家康を非難させてるあたり、

脚本家の人はわかって描いているのかなとも思うんだけど、

まだちょっと信用できないんだよな~...。

面白いと思えるとこも増えてきたんだけど、

雑な展開、陳腐な描き方に抵抗があって、素直に楽しめないのだ。

 

松平の家臣団、無能で何もしないくせに、

「忠臣しかいなくなった」とか言ってるうえ、

えびすくいでハッピーエンド!とばかりに

何も学んでいる様子がないの、なんか見てて暗い気分になっちゃう。

こういう連中しか頼る人間がいないの、本当に困るだろうね......。

まあ、今のところ、優秀な人材が仕えるに値するような主君じゃないから、

仕方ないとも言えるのだが......。

この家臣団の駄目っぷりも、制作サイドが自覚して

描いているかどうか怪しいと思ってる。

 

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映画:『THE FIRST SLAM DUNK』

2023-03-03 19:14:33 | 映画の感想
2023年の映画⑦『THE FIRST SLAM DUNK』(井上雄彦 監督)
★★★★☆
 
映画館にて。
 
原作の漫画は高校生のころに大変面白く読んだし、
アニメ版のOP・EDも印象的だったのだけども、
特にアニメにはそこまで思い入れがないので、
声優交替で(ネガティブな方向で)騒ぎになっていたのは
「なんでそこまで……?」だった。
 
映画を見ようと思ったのも、人に勧められて、
「次のミーティングで『見た?』って訊かれるよな……」
という消極的な動機。
 
……なのだけれども、映画自体はとてもよかったと思う。
 
正直なところ、追加された設定・エピソードについては好きじゃない
(というか、後付けが好きじゃない)のだけども、
原作者の先生が映画も作っているだけあって、
ちゃんと本編と整合性がとれるレベルに収まっていた。
それに、山王戦に回想で過去エピを挟んでいく方式だから、
彩子さんとの間にある恋愛要素を排除して、
2時間を貫く縦軸に家族ドラマを持ってきたのは、
一つの映画としてまとまりがついてよかったと思う。
 
いちばんよかったのは、試合がちゃんと面白かったこと。
わたしは、漫画や小説のスポーツものはスポーツのシーンを、
バトルものはバトルシーンを飛ばして読むんである。
なんというか、映像ならまだしも、絵や字でそれを読む意義みたいなのが
わからないのね……(映像でも早送りするときがある)。
それが今回、試合が本当に面白かった。
もちろん展開の巧みさがベースにあるんだろうけど、
漫画ではそこまでは思わなかったから
やはり演出がよかったのかもしれない。
 
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