自分が6年前に大学病院を退職した時であったが、その時代の病院における業務上の説明書や同意書の類の多さには辟易した。知らない間に義務付けられた書類がどんどん山のように増えてきたのだ。おそらくは自分が研修医のころの仕事量の2~3倍にはなっていただろう。しかも電子カルテが導入されてからは医療の内容に加え、診療報酬請求やらの事務仕事も医師がしなくてはならなくなった。そこにきて近年「説明と同意」(IC:インフォームドコンセント)というものが言われ、きちんと診断やらそれにいたる検査方法の説明と、診断がついたら複数の治療法をその都度何回も患者さんに提示してそれに納得したら治療が開始されるという「気の遠くなる」ような業務が追加されたのである。患者さんがその都度納得しなければ先にすすめない。こちらできちんと説明義務を果たしたつもりでも、あとから患者さんから「あの時はよくわかりませんでした」といわれればこちらの義務は果たしていないこととされている。一人に費やす時間が増えれば外来ではますます待ち時間が増えるのである。