吸入した気体のヘリウムは物理特性としてすぐ血管内に入るのであろうか? もちろんいきなりガス(気泡)自体が血管内に入り込むなどと言う経路は「健康な」身体ではありえない。まず分子レベルのHe(ヘリウム)なら肺胞を通過し血液中には入るだろう。因みに肺胞とは、気道の一番奥の部分であり、ここで気体中の物質が分子レベルで血中へと交通する(気泡などの大きいものは通過しない)。しかし血液に分子レベルの大きさのヘリウムが溶け込んだとしても、それが血管内で気泡化するのであろうか? 血管内で気泡化しなければ空気塞栓にならないはずである。果たして血管内のヘリウムが気泡化するに至る原因はあるのであろうか? 通常、スキューバダイビングの場合、血液中の溶存窒素は、高圧環境からいきなり急減圧すると気泡化して血管内をふさぐ。窒素の場合の機序は理解できるが、ヘリウムの場合、分子レベルのヘリウムが気泡化するには何らかのきっかけがあるはずと思うのだが・・・。まあ気圧の急激な変化なくとも溶存ヘリウムは気泡化するのが物理特性なんだと言われれば今回の話はそれで終わりである。ただそうであれば、すでに今まで何人もの空気塞栓がこのグッズ吸入者で報告されているはずである。