嘘のようなホントの話である。昔、救急外来当直で夜中の3時ごろの話である。洗剤を飲んだかもしれない(目撃者なし)という触れ込みで若い夫婦が乳幼児を連れてきた。まさか夜中に洗剤を飲むというのも変なので話をきいたら、昼間に洗剤をいじっていたらそれがこぼれて顔に付着したらしいとのこと。その後は別段何の変りもなく機嫌はよく食事もよく食べて夜には寝たのであると。しかし夜半になってから急に泣き始め、それがまったく泣き止まないというのである。私:「昼間に飲んだかもしれないというのに何故、今この夜中の受診なんですか?」とちょっと皮肉をこめて聞いた。母親:「あまりにも泣きやまないので、洗剤の裏書をみたら『・・・ただちに医師の・・・』と書いてあったのをさっき読んで不安になりすぐに来ました。『ただちに』こないと死んでしまうんですか?」と・・・。だから焦って夜中の3時に救急外来に飛び込んできたわけである。ん~・・・・、まあ、これも医師の仕事の範疇なんだろうかなー? しょうがないんだろうなーと疑問に思いつつも診察した。患児(健児?)は泣き疲れてスヤスヤ寝ているのである。私はあと数時間でまた通常の診療業務が「普通に」始まるのである。この健児のようにスヤスヤと休みたかったのであるが、『免罪符「ただちに」』のせいで私はまたアドレナリンを出さざるを得なかったのである。