以上のことを長々と述べた主な理由は、「万物の創造神」という神概念は、人間の心には自然発生しないことを示すためでした。
<在物神の神イメージ>
人類には、神という「見えない、超人的な力ある存在」へのあこがれと恐れの感情はありました。
だが、そのイメージは、「物質の中に存在する」というものでした。
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たとえば大きな樹木や岩や、山や海や空をみて、「そのなかにいる」、と想像するものでした。
筆者はそういう神概念を「在物神(じぶつしん)」と呼んでいます。
「物」の中に存「在」すると想像される「神」という意味です。
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人類の心に自然発生したのは、在物神の神イメージだけでした。
そうしたなかで、紀元前1500年頃のある日、モーセに「オレは創造神」であり、「まことで唯一の神」だという啓示が与えられたのです。
啓示というのは、超自然的な存在から投げかけられるメッセージです。
世の中には、霊感に優れた人間もいますが、彼の口から出る言葉でもありません。
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だがそういう話を聞くと、人はまず「モーセもそういって自分の考えを述べていたのだろう」と思います。
ところが、『旧約聖書』に記録された啓示を読むと、そうではない、ことがわかってきます。
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彼が受けた啓示の言葉は、兄のアロンが記録しています。
それらは『創世記』や『出エジプト記』『申命記』など、旧約聖書の冒頭の五冊の書物に記されています。
「モーセ五書」と呼ばれる、それら書物に記された長大な言葉は、とても、人間が考案できるものではない。
「律法」だけでも、膨大な文章量です。
それを読んでいくと、一人の人間が考案できるものでないことが、容易にわかってきます。
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モーセが受けた啓示の中に初めて、万物の創造神という神概念が、人類社会に登場するのです。
イエスも、その神概念を受け継いで、教えを展開しています。
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それ以外に、純粋な創造神概念は人類の意識に、自然発生してはいません。
以後、他の宗教で語られる創造神めいた概念は、「聖書」の援用であり「言い換え」なのです。
そのことを正確に認識することを主目的として、鹿嶋は前回までの話を記しました。
(続きます)
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