
前回の知識を得ると、キリスト教史の本当の姿が初めて目の前に浮上する。
ホントのキリスト教史は、国家権力の一部となったカトリック教団と、初代教会以来の聖句自由吟味活動をする教会とが織りなす重層構造からなっている。
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ローマ帝国という、国家の宗教局となったカトリック教団は、欧州の全宗教活動を、自分の方式に統一しようとする。
ところが、自由吟味活動を中心に据えた初代教会方式の教会は従わない。
カトリックとは根底的に相反する方式だ。
水と油なのだ。
両者は、「これが同じキリスト教活動なのか!」と驚くほどに対極的だ。
聖句自由吟味者は、「これは不変不動の知識ではないか!」との感動を、日々得て暮らしている。
彼等は、この感動の日々を捨てなかった。
捨てられなかったのだ。

<国家権力教団、怒り狂う>
カトリック教団の怒りは、権力者の怒りとなって燃え上がった。
かれらは自由吟味者の拠点を襲撃した。
国家権力者だけが用いることの出来る軍隊、これに命じて自由吟味者たちをとらえた。
見せしめのため、広場で日ごと夜ごと火刑に処した。
この状況は、たとえば『聖杯の暗号』~箒木蓬生(はばきぎほうせい)著~という小説にリアルに描かれている。

<山地に逃れた人々>
自由吟味教会の人々は、ピレネー山脈、アルプス山脈の山地、あるいは、スイスの山地に隠れ住んで活動を続けた。
これを発見したカトリック軍隊が、かれらを周期的に襲った。
これら山地に逃れ住んだ人々の悲劇については、文献資料が切れ切れになって残っている。

<北欧に逃れた人々>
筆者は、このほかに、今日言うところの北欧地域にも多くの自由吟味活動者たちが逃れ住んだとみている。
今日の国名で言えば、デンマーク、スエーデン、ノルウエー、フィンランドなどの地だ。
これらの地域は、秋、春からして底冷えの深い寒冷地だ。
今は暖房設備が発達しているが、当時は冬などは極寒の地の果てだったろう。
しかも、カトリックの本拠地、イタリー、フランス、スペインから遠い。
カトリック教団も、この遠隔地にまで探偵に探らせ、軍隊を派遣することは出来なかったのではないか。
それ故に、襲撃、捕縛、処刑という事件は起きなかっただろう。
欧州中央の山脈地域に逃れたような自由吟味活動者たちが見舞われたような悲劇がなかった。
それ故にまた、彼等に関する文献資料はないのだろう。

<現地での直感>
けれども、北欧に多くの自由吟味者たちが逃れ住んだことを、鹿嶋は直感できる。
これらの地を巡り歩き、折々に住民と交わってみると、その英知がとても高いことが観察できる。
彼等の精神波動は、まぎれもなく、自由吟味者たちのものだと筆者は感知できる。
小学校の教育現場にも、そのスモールグループ活動の知恵が観察できる。
この地の大人たちの今現代の行動にも、聖句吟味活動によって得られる精神が如実に感知できる。
これらから、北欧が聖句自由吟味者たちの地であることが、鹿嶋には十分すぎるほど直感できるのだ。

<英国国教会は自由吟味者を動かした>
時代が下って、英国の豪腕ヘンリー8世が、英国国教会を設立する。
王は突然カトリック教会を廃止し僧侶たちを追放する。
これで、カトリック固有の、自由吟味者への執拗な追求、襲撃が英国からなくなった。
欧州の自由吟味者たちは、ひそかに、かつ、トータルとしては大量に英国に流入した。
彼等は、聖句吟味が自由に行えるところなら、どこにでも移住するのだ。
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英国民は、突然、聖句吟味活動に触れた。
彼等の知性は、異例な活性を得て、明晰、かつ、強靱になった。
以後、英国が七つの海を支配し、産業革命の発祥地となるのも、それによる。
自由吟味者の活動に触れ、かつ、多くの人がそれに影響されたことによる。
自由吟味方式に転向した人もかなりいたようだ。

<新大陸への移住の道が開ける>
その彼等に、さらに自由になれそうな新天地が開けた。
大西洋の向こうにある北米大陸だ。
自由吟味者は英国からそこに移り、その地で植民地独立戦争を仕掛けた。
植民地は勝利し、本国からの独立を実現した。
国家を作り、信教自由の憲法を確立した。

<第二次大戦後の世界運営を任される>
米大陸での自由吟味者の活動は、人民に色濃く影響し、飛び抜けた知的活力を形成した。
この国は時とともに強くなり、第二次大戦後は世界運営を引き受けてしまう。
戦後70年の間、世界は米国によって運営されてきているのだ。
だから、米国に無知では、世界を正確に認識することは出来ないのだ。

<歴史認識の落とし穴>
繰り返すが、キリスト教史はカトリック教団と聖句自由吟味者の教会とによる重層構造で出来ている。
そのビジョンなしでは、真の姿は認識できない。
ところが、歴史の説明とは、奇妙な性格を持っている。
自由吟味活動を知らなくても、一応の説明はできてしまうのだ。
それなしのストーリーが作れてしまう。
ここに落とし穴があり、人類はそれにはまった状態で今日まで来ているのである。

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