前回、マルクス理論には「明」と「暗」との二つの面があることを示した。
今回はその続きである。
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人類はマルクス理論の「暗」の部分がほとんど認識できなかった。
「明」の部分が、たぐいまれなる扇情力をもっていたからである。
<不平等への怒りと富める者への憎悪>
扇情力を構成するのは、第一に、この理論が人の心に生成さす不平等への怒りである。
それに、不平等で得をしている資本家への憎悪が加わる。
さらにそれは人の心に正義感をも燃え立たせる。
<理想社会を切望させる>
マルクス理論が示す、理想社会への道筋もまたわかりやすかった。
~市場制社会では、時と共に、生産活動の桎梏(手かせ足かせ)ができていく。
これが呪いとなって、生産機械も原料もあるのに、生産が出来ず人々は貧困に陥っていく。
だがその究極の原因である私有財産制をなくすれば、、生産活動はフル回転し、この世に生産物は増大の一途となる。
マルクスはその世界を~
「能力に応じて働き、必要に応じて取る」のが当たり前の社会、~と表現した。
実はこのフレーズは聖書のなかにある聖句(新約聖書『使徒行伝』のなかの聖句)なのだが、マルクスがそれをパクッたかどうかは実証されていない。
が、とにかくその社会では、もはや人々は生産物を巡って争うことはない。
社会の全員が愛でもって結びあえる。
マルクスのこの理屈は、一般大衆にも非常にわかりやすかった。
人々は理想社会の夢に、ほとんど酔った。
人類史において、これほどの扇情力を持った思想はあまりないのではなかろうか。
<知識人が革命を起こす>
知識人も同意した。
ロシア帝国のレーニンは、マルクス理論をさらに展開させ「帝国主義論」を著した。
彼は指導者となって、ロシアに初の社会主義国を実現させた。
指導者たちは~、
「この社会は人類の理想であって、全世界に広げ人々を救わねばならぬ」
~という使命感に燃えた。
「インターナショナル」という世界革命運動組織をつくり、まず、周辺国をなし崩しに社会主義化した。
そして、ソ連〔ソビエト連邦社会主義共和国)をつくった。
<中国では毛沢東が>
第二次大戦後、中国でも毛沢東が社会主義革命を成功させ、社会主義の中華人民共和国ができた。
従来、中国の統治権を手にしていた蒋介石は、共産主義思想の不気味な「暗」の部分を直感した。
そして、毛沢東の率いる共産党員をとらえ処刑した。
だが、当時の中国民衆を一体化させる力においては、マルクス思想が圧倒的に勝っていた。
時と共に共産党勢力が優勢になり、ついに、毛沢東が勝ち、蒋介石は台湾に逃れて独立政府をつくった。
<キューバ、北朝鮮、北ベトナムも社会主義に>
キューバもこの思想で革命を起こし、功労者チェ・ゲバラと共に、カストロが国家運営を始めた。
朝鮮も、北半分が共産主義国になった。
ベトナムでも、北は社会主義国になった。
これらの国もまた、南の共産主義化を自らの使命と信じた。
<世界を二つに割った>
こうして、世界の半分弱が社会主義国になった。
結果的には、マルクス思想が世界を二つに割ったのだ。
その扇情力の強さと広範さは恐るべきものであった。
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