鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

米国への無知を正す2

2015年02月06日 | 米国への無知を正す





フーバーが第31代米国大統領として働いたのは、1929~1933年である。
この間起きた世界大恐慌(1929)に対して、彼はフーバーダムの建設工事でもって公共雇用を作り出すなどの政策で対処した。
これはケインズ理論を先取りするような経済政策だ。

次いで第32代大統領に就任したフランクリン・ルーズベルトは、1933~45年までの長期にわたって大統領職をつとめ、1945年、終戦を目前にして急逝した。

この後継者がヘンリー・S・トルーマンで、彼は1945~53年まで大統領職を果たした。




<資産家に公共心が強い国>

米国の資産家はほとんどが公共心の強い愛国者でもある。
米国独立戦争以来、彼らは任意に連携し合って、米国政府を支えてきた。
この種の非公式な連携体をボランタリー・アソシエーションという。

フーバーは米国政治を支える資産家でもあり、かつ、自ら政治家としても働いた特殊な大才だったのだ。
大統領としての期間は短かったが、その後もルーズベルトらの政治を支え導き続けた。





<チャーチルの参戦依頼>

そのルーズベルトに、英国首相だったチャーチルは第二次大戦における欧州戦線への参戦を求めた。

第一次大戦は、米国の参戦によって英仏陣営の勝利が決定づけられた。
この頃から既に米国の力は絶大だった。

そして、この第二次大戦では米国に参戦してもらう必要が英国にはさらに高かった。
ナチス・ドイツのロンドン空爆が激しく、市民の士気も沈滞方向をたどっていたからである。
チャーチルの参戦要請は執拗だった。




<米国参戦条件を突きつける>

これに対してルーズベルトとそれを支えする有力者からなる米国側は、参戦の条件を突きつけた。
筆者流に要旨を描くならばそれは以下のごとくだ。

~二度にわたる世界大戦は、先進列強国が後進国を征服してそこから利益を吸い上げようとするが故に起きている。
先進国がかかる行動様式を続ける限り、植民地確保の権益争いはなくならない。

そこでは利害の一致する先進国がグループを組む。
そして世界規模の大戦が必然的に起きていくのだ。

今度の戦争が終わったら列強はみな、自らの植民地を放棄すべきだ。
後進国を独立させ、そこから利益を吸い取ることを止めねばならない。

ついては貴国・英国はダントツに多くの植民地を持っている。
大戦が終わったあかつきには、これらすべての支配権を放棄し、独立させよ。
まず隗より始めよ。
この条件をのむなら米国は参戦しよう、

 ~こうルーズベルトは応じた。





<列強による後進国隷従化が消滅する>

思いもよらぬ条件を突きつけられたチャーチルは、応答の猶予を求めた。
だが、結局背に腹は代えられない。
彼は「支配国家の個々の事情を鑑みつつ」との一文の挿入を認められて合意案に署名した。

こうして「戦後は後進国を独立さす」というポリシーの大枠は決まり米国は参戦した。

アイゼンハワーが連合国の総司令官となって、ノルマンディー上陸作戦を成功させ、ドイツ、イタリーを降伏させた。

太平洋方面総司令官のマッカーサーは日本を降伏させ、朝鮮、満州、台湾などを独立させ、日本統治の連合国総司令官として厚木空港に降り立った。

そのしばらく後のセリフが、前述した「日本人は政治的に13才」だったのである。

ともあれこうして、第二次世界大戦後には、列強による後進国隷従化志向はなくなった。

経済学においても一種の人間愛(ヒューマニズム)とも言うべき視点が優勢になった。
「低開発国をいかにして経済発展させるか」が主要テーマになった。

スゥエーデンの経済学者、グンナ・ミュルダールの名著『経済理論と低開発地域』もこの新世界風潮の中で書かれた。
そこで展開された「累積的因果関係のモデル」は後進国経済を発展に導くための貴重な指針となった。


(続く)








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米国への無知を正す1

2015年02月05日 | 米国への無知を正す








フェースブックなどにみられる米国論のほとんどはあまりに実体から離れている。
この問題の根は深く、正すためには多くの知識を導入する必要がある。
それゆえ鹿嶋は、これを論じる気力がなかなか湧かなかった。

しかしYamamotoさんという、米国在住の女性が孤軍奮闘して正論を述べておられるのをみた。
これにうながされて、私も妥当なアメリカ観を示そうという気になった。
以下にしばらく連載するのがそれである。

話をどこから始めたらいいのか、にも悩んだ。
主要な起源は様々に分派したキリスト教諸活動の性格にある。
国家というモノ、戦争というモノの性格もそれに絡んでくる。
だがこんなことから示しはじめたら、ついてこられる読者はあまりに少なくなるだろう。

そこで、第一次大戦あたりからとりあえず開始することにした。






<第一次世界大戦の衝撃>


今我々は第一次大戦を歴史の中の一コマとして暢気に眺めている。
それが幸いにして収束したことを知っているからだ。

さらに第二次世界大戦もおきたが、それも、当面70年間ほど収束している。
だから我々は平静な気持ちで 眺められておられる。

だが、これが起きたただ中に生きていたフーバー青年(Herbert Hoover, 1874~1964、後の米国第31代大統領)は大ショックを受けた。

彼にはこれは全人類が二つの陣営に分かれて、近代の大量殺戮兵器を駆使して殺し合うという未曾有の現象だった。

人類世界が破滅に至る暗黒の未来を予感させる恐怖の大事件であった。

どの近代国家も、これを避けることが出来なくなっている。
まるで悪魔に目隠しされ誘導されるがごとくに、どちらかの陣営に加わっていき、そして殺戮をしあっている。

機関銃という近代兵器は、兵士をなぎ倒すかのごとくに短期に多数の兵士を殺傷した。
毒ガスも使われ、終戦後も兵士はその後遺症で地獄の日々を送った。





<フーバー研究所を造る>

フーバーはこの戦争の正体を見極める必要を痛感した。
原因を究明し人類の未来の暗黒を避けようとした。

そのため彼は、母校のスタンフォード大学に、私財を投じて戦争と平和を研究する機関を造った。
「戦争と平和を課題とするフーバー研究所(Hoover Institution on War and Peace)」がそれである。

彼はフリーの戦争記者を数多く雇い、戦場の前線に送った。
そこで戦争の現場資料をかき集めさせた。

現場に散乱する死んだ兵士の手帳、メモ書き、日記から水筒などの所持品に至るまで、ありとあらゆる現場資料を収集させた。

スタンフォードのキャンパスに今もそびえるフーバータワーを造り、その中に、資料を収納させた。





<ロシアに革命が起きる>

ところがこの大戦のさなかの1917年、ロシアに人類史初の社会主義革命が起きた。
社会主義革命もまた、世界動乱の一大原因だ。
国家の既存の統治権を暴力で奪い、自らの理念に沿って人民を「命令=服従」のシステムに組み入れて支配していく。

フーバーはまた、この現場にも命知らずの現場記者を送り、ありとあらゆる現場資料を収集させた。

かくして彼の研究所は「革命」というもう一つの課題をも抱えた。

その名も「戦争と平和を課題とするフーバー研究所(Hoover Institution on War and Peace)」から
「戦争と革命と平和を課題とするフーバー研究所(Hoover Institution on War,
Revolution and Peace)」に変わった。

研究所は今日まで続き、タワーもキャンパスにそびえている。






<親のいない子として>

フーバーはアイオワ州のクエーカー教徒の一家に生まれ、親はすぐに亡くなったと言われているが、
親のわからない、いわゆる孤児だったという説もあり、実体はよくわからない。
彼は幼くして、オレゴン州の親類の家に転居したともいう。

以後、どのように成人したかも筆者には不明なところが多いが、成人するとスタンフォード工科学校にて鉱山学を学んだ。

そして金山を発見し、若くして巨万の富を手にした。

彼はその私財の多くをおおやけごとに注いだ。
政治に注力し米国大統領として働いたのはよく知られている。
だがスタンフォードとフーバー研究所のことがらを知る人はさほど多くはない。




<鉄道王スタンフォードと工科学校>

親のないフーバーが、若くしてスタンフォード工科学校に学べたのは、その授業料が無料だったからだ。

創立者は米大陸横断鉄道の西部地域を建設したスタンフォード(Leland S. Stanford. 1824~1893)である。
彼は巨万の富と鉄道の経営権を、一人息子に譲るつもりだった。
だが、その愛息は17才にして病死した。

鉄道王は悲しみに暮れた後、息子への愛情をカリフォルニアの若き青年たちに注ぐ決心をした。
当時必要性の高かった工科技術を教える学校を造り、青年たちに無料で学ばせた。

フーバーはその恩恵を受けた学生の一人で、鉱山学をそこで学んだのである。
そしてその知識を駆使して金山を発見し、巨万の富をおおやけごとに注いだのであった。

(続く)








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