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自縄自縛日記

沖縄「集団自決」問題(9) 教科書検定意見撤回を求める総決起集会

2007-10-15 23:59:19 | 沖縄

高校教科書から、沖縄戦において日本軍が住民の「集団自決」に関与しなかったような記述に変更するような「検定」があった件は、その撤回を求めて、9月29日の沖縄県民大会での11万人参加という大きなうねりとなっている。東京でも、東京沖縄県人会と沖縄戦首都圏の会とが主催で、「教科書検定意見撤回を求める総決起集会」が開かれた(2007/10/15、星陵会館)。

私も参加してきた。会場は座れないほどの混雑、集会後の発表では650人超だったそうだ(カンパは35万円超)。

多くの国会議員が壇上に座った。また、いろいろな団体や自治体もスピーチをした。かといって政治集会とは受け取らず、多くの声を代表してのことだと考えるべきだと思う。

以下、各人の発言をかいつまんで紹介する。(逐語的な再現ではないことには留意してほしい。)

●開会挨拶 川平朝清氏(東京沖縄県人会会長)

・県人会は県民以外の「沖縄好き」の人たちにも開かれたものとしたい。
・「朝日川柳」には、「琉球処分の歴史脈々」、「文科省介入していぬ顔で言い」なんて作品が寄せられている。この「検定」の動きの悪質さも認知されてきた。
・「検定」の審議会はずさんだった。多くの人に正しい現代史を知ってほしい。

●川内博史衆議院議員(民主党)
・文科省の「検定」は中立性も公平性も欠いたものだった。
・もういちど審議会を開かせる決議案を参議院で採択したい。
・まだ民主党に一部の抵抗勢力があり採決に至っていない。
・教科書会社からの「訂正申請」を受けた対応は、撤回でも回復でもない。


壇上には喜納昌吉参議院議員(民主党)、赤嶺政賢衆議院議員(共産党)、辻元清美衆議院議員(社民党)らも座った

●山内徳信参議院議員(社民党)

・この動きは本土をも動かしていることを感じる。
・衆議院の代表質問や予算委員会でぶつけても、閣僚の答弁は「重く受け止める」「真摯に」など、ことばだけだ。
・なぜ住民が手榴弾という兵器を持っていたのか。「集団自決」への日本軍の関与は明らかだ。
・かつて家永教科書を使うなという皇国史観の役人を、沖縄の高校が協力して追い返したことがある。
・官房副長官には、「「検定」に政治介入できないというが、それを行っているのはあなた方だ」と伝えた。文科省の調査官が、行政介入、思想介入している。
・沖縄県民は、何回殺され、何回自決すればいいのか。

●遠山清彦参議院議員(公明)

・県民大会に参加し、その雰囲気とともに、記述回復を渡海文科大臣、福田首相、北側公明党幹事長に要請した。
・「検定」制度のあり方を厳しく再検証しなければならない。議事録は公開すべきだし、文科省調査官の作ったものがどのようなプロセスを経るのか透明性を確保しなければならない。

●ひめゆり学徒の沖縄戦体験 上江田千代氏

・自分は皇民化教育を受け、軍国少女として育った。
・師範学校に入ったが、軍命で学徒動員がなされ、高射砲の構築や飛行場周辺の堀を掘削するなどにかり出された。
・食糧の配給は、ごぼうの煮しめ二本、味噌なしの塩汁(「太平洋汁」)など本当に少なかった。
・「集団自決」のあった座間味島や渡嘉敷島などに比べ、軍隊のいない島ではそれはなかった。軍隊は住民を守るものではなかったのだ。
・壕で日本軍に協力したが、ガマのような頑丈なものではなかった。入口からは血と尿の臭いがして吐き気をもよおした。
・ピンポン玉のようなご飯を一日一個しか食べられず、軍医も衛生兵もおらず薬もない状況では兵士が次々に死んでいった。死体は壕の外の穴に埋める、その繰り返しだった。毎日が地獄だった。
・日本軍より、壕からの移動命令が出た。歩けない者は「生きて虜囚の辱めを受けず」、つまり殺された。誰も歩けないので手榴弾が配られ、自分ももらって将校に死ぬための使い方を教わった。
・将校は「逃げて生き延びなさい」と言ってくれたが、夜、死体の上を歩いて逃げた。
・隠れた岩陰から、近くに米兵が見えた。家々に火をつけて歩いていた。
・いよいよ死のうと思ったら、手榴弾がなかった。父親が捨てていてくれたのだ。
・他人の看病をした。蛆は、膿を食べると次に筋肉を食べて太る。その大きな蛆を取って潰した。
・墓の横の穴にいたら、米軍が「抵抗しないで出て来い」と叫んだ。そして爆弾を投げられ、皆死んだ。自分と母親は奇跡的に生き残った。
・米軍に収容されて、狭く、食糧も少なく、雨が防げなかった。しかし、みじめとは思わなかった。弾は降ってこないし、逃げまわらなくてもいいし、青空のもとで堂々と歩けるのだ。
・戦争は人間の理性を失わせるものだ。戦争を二度としてはならない。憲法9条の精神が、平和への道となる。
・教科書は真実を伝えるべきものだ。

●糸数慶子参議院議員(無所属)

・南京大虐殺、従軍慰安婦とともに沖縄戦の歴史に光を当てたいと思い、「平和ガイド」をやってきた。
・自分は一議席ではあるが重みを感じる。
・沖縄戦の真実を、今こそ国民全体が後世に伝えていくべきだ。それが私たちの責務だ。

●川田龍平参議院議員(無所属)

・かつて薬害エイズの被害者として沖縄で講演したとき、平和の礎と平和祈念公園を訪れ、「集団自決」の写真を見た。
・戦争の責任が曖昧にされている、他国の人々のみならず、自国の人々を殺していった責任も曖昧にされている、と感じた。
・薬害問題は、被害者だけの問題でも、過去だけの問題ではない。その点で共通している。悲劇を繰り返さない使命がある。自分にも起こるかもしれない、自分の問題だ。
・辺野古に何度も足を運んだ。高江のヘリパッドもそうだが、まるで民主的な手段で基地をつくらせることを許してはならない。
・今回、「検定」が撤回されたとしても、たたかいを止めてはならない。

●市田忠義参議院議員(共産党)

・「集団自決」は軍命なしに起こりえなかったことだ。誰が強制なしに、わが子をあやめるだろうか。
・政府は「「検定」に介入できない」としているが、そもそも介入していたのは他ならぬ文科省だった。
・赤嶺政賢衆議院議員(共産党)の追求により、「検定」プロセスが明るみに出てきた。文科省調査官が専門家の意見を聴かず検定意見をつくり、これに文科省職員7名の判が押してあった。つまり文科省の自作自演、組織ぐるみの犯行だ。
・「検定」撤回は介入ではない。勝手につくった「検定」への固執こそが介入だ。

●大浜敏夫氏(沖教組委員長)

・小さな火種が大きな議論をまきおこした。
・沖縄の新聞などが怒った人の証言を掲載しはじめ、これが奏功した。
・6月の県議会決議は、9月県民大会の火種になったと自負している。
・「検定基準」に「沖縄条項」をうち立てたい。

●高嶋伸欣氏(琉球大学教授)

・「検定」撤回に反対する集会が別に開かれているが、報道陣以外は数人の参加者に過ぎなかったようだ。そして資料に、「国民的論議をまきおこしている」と記述し、認めてしまった格好。
・「産経新聞」のアンチ「検定」撤回キャンペーンは、首相が「11万人」と認めてしまい、うまくいかなかった。
・今回の運動は、日本の戦後民主主義における「主権在民」を行動に移しているものだ。
・小学校6年生の社会科の教科書には、前回(95年、米兵による少女暴行事件)の沖縄県民大会の写真を大きくとりあげ、「考えてみよう」と提起までしている。審議官はこれを認めていたのだ。今回の県民大会も、「検定」対象となった教科書だけでなく、多くの教科書にとりあげてほしい。

●藤本泰成氏(フォーラム平和・人権・環境 副事務局長)

・文科省による「検定」の根拠は、学術的な理由が不十分だったこと、結審もしていない裁判、審議会での審議がなされなかったことから、すべて否定されている。
・「検定」撤回は「政治介入」とは偏っている。史実は、県民大会に参加した11万人という人数が証明している。議論の余地があるというなら、反対の観点で大会を開けばよい。しかし、多くの人を集められるわけがない。
・「検定基準」のなかに「沖縄条項」を入れ込むべきだ。

●米浦正氏(全教委員長)

・日本を「戦争できる国」にしたい人々にとって、歴史を改変したい標的は、南京大虐殺、従軍慰安婦、そして沖縄戦「集団自決」の3つがある。残念ながら従軍慰安婦については、2005年の中学校教科書から削除されている。
・「軍隊は国民を守らない」は史実だ。
・このような「検定」を許してしまっては、また軍隊が国民に銃口を向けてしまう。

●三鷹市、国立市、鎌倉市、小金井市

・「検定」撤回を求める意見書採択を得たことを、それぞれ報告された。

意見書を採択した、あるいは動いている自治体を表示

●閉会挨拶 俵義文氏(沖縄戦首都圏の会呼びかけ人)

沖縄の高校生の寄せ書きが何枚もできていた


恒例の締め