Sightsong

自縄自縛日記

高江・辺野古訪問記(2) 辺野古、ジュゴンの見える丘

2007-10-01 23:52:20 | 沖縄
9月25日朝、高江を後にした私たちは、自動車で辺野古に向かった。沖縄東岸を東村から名護に向かうわけだ。途中、宮里藍さんの実家の横を通り、慶佐次で貧乏旅行君とまた逢ったりして、大浦湾の北側から米軍のキャンプ・シュワーブを眺めた。紆余曲折を経て、新たな「V字型滑走路」は、キャンプ・シュワーブのある辺野古崎の先っぽに作られる計画が進められている。しかし、そのための環境アセスは、事業を行う「ためにする」、酷い似非アセスであり、しかもそれが政府によって、米軍協力のためになされているという現実がある。先日、このアセスの「方法書」については、意見書を沖縄防衛局に送ったばかりだ。


大浦湾の蝶 Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


大浦湾の北側からキャンプ・シュワーブを眺める Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


キャンプ・シュワーブのゲート Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


キャンプ・シュワーブのゲート Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP

辺野古の街中は、映画『ホテル・ハイビスカス』のロケ地となったあたりだ。飲食店を見つけ、昼食をとる。その隣には、辺野古基地建設を推進する目的のプレハブがあった。実際、漁協は推進の側に立っているという。

漁港に到着し、まずは座り込みのテントにお邪魔する。既に何人もの方がいた。ヘリ反対協議会代表の安次富浩さんもおられて、色々と話をした。この日も高江同様に動きがあまりなく(もともと日曜日はそうだとのこと)、何だかよくわからない沖縄防衛局のチャーター船がリーフ辺りをうろうろしているとのことだった。安次富さんは、双眼鏡やカメラで、「前に歩く蟹」を観察していた。三番瀬にもいるマメコブシガニだろうか。砂浜は赤土流出の色にそまっていたが、沖の海はとても綺麗だった。テント内から見ていると、チャーター船も戻ってきた。


辺野古の座り込みテント Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


辺野古の座り込みテント Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


釣り人もいる Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


辺野古の座り込みテント Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


チャーター船が戻ってきた Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP

漁港のすぐ東隣の砂浜に出てみた。キャンプ・シュワーブとの境界が鉄条網で区切られている。そして境界は海まで飛び出している。そして監視カメラも見える―――この風景に違和感を覚えない者は相当麻痺しているに違いない。基地のフェンスよりも、相当「ナマ」の形なのだ。鉄条網には、「裂け目のこちら側」にいる人たちが付けた多くのリボンが、風に揺れている。

さっき眺めた、辺野古崎のキャンプ・シュワーブを、今度は南側から見る。ここに滑走路ができて、ヘリが垂直離着陸を繰り返したりしたら、明らかにこの風景は一変する。たぶんそれを意識しない子どもたちが、砂浜で遊んでいた。砂浜には、中国からと思われる漂着物がいろいろあった。「中国脅威論」など、これ位にとどめてほしいものだ。


キャンプ・シュワーブの鉄条網 Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


キャンプ・シュワーブの鉄条網は海に飛び出る Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


キャンプ・シュワーブ Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


中国脅威論テープ Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP

テントに戻って程なく、アーティストの照屋勇賢さんが来た。24wackyさんに紹介して頂き話したが、今度移転して際オープンする「沖縄県立博物館・美術館」で展示の準備を進めているそうだ。「ジュゴンの見える丘」に行こうという話しになり、初めて会う6人ほどで自動車で向かった。場所はわかりにくいが、また大浦湾の北側に戻り、天仁屋と嘉陽の間あたりのようだった。道は、別の建物に居た、ずっと辺野古で活動している冨田晋さんに教えてもらったようだ。

自動車を降りて、山道をてくてく歩く。時々、木々の間から、イタジイの森が見えた。「ブロッコリー」がいっぱい並んでいる。大きな女郎蜘蛛もいた。

しばらくして到着した丘からは、とても美しい海が一望できた。安部崎の向こう、大浦湾を挟んで、やはりキャンプ・シュワーブが見えた。当然、珍しいジュゴンをすぐに見ることができるわけはないが、このあたりを回遊し、餌場にしているのだ。滑走路ができて、影響がないわけがないと実感できる。歌手のCoccoが、『ジュゴンの見える丘』という歌を発表し、既に那覇市内では沖縄限定発売のCDが売られていた。


イタジイの亜熱帯林 Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


イタジイの亜熱帯林 Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


女郎蜘蛛 Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


ジュゴンの見える丘から大浦湾の方向を眺める Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP


ジュゴンの見える丘からジュゴンの海を眺める Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


亜熱帯林とジュゴンの海 Pentax LX、FA★200mmF2.8、Provia 400X、DP


照屋さんもジュゴンの海を眺めて撮影する Pentax LX、FA★24mmF2.0、Provia 400X、DP

辺野古で気が遠くなるほど地道に座り込みを続けている人たちも、問題意識ゆえに集まってきた人たちも、やはり、きわめて誠実に、真摯に、この海や生態系と向かい合い、それから海がもたらすかもしれない戦争への拒否をあらわしていた。私たちが近づくことのできない米軍敷地内に滑走路を作り、そこから離発着するヘリが住民の住環境や安全を平気で侵害し、そしてジュゴンやサンゴの棲む貴重で大切な環境を損なう。そのために、アセス法をも政府自らが明白に違反している。

米軍の戦争に加担して多くの罪のない人々を殺し続ける国防政策・外交政策は間違っている。仮に、上からの押し付けではなく、私たち自身による民主的な検討の結果、マクロ的にそのような政策をとることになったとしても、人や生物が生きる環境を犠牲にするのも間違っている。環境保護は国防政策・外交政策の次に来るものだと勝手に定め、国自らが法律違反を犯し、暴力を使ってでも強行する―――これが、さまざまな教訓と経験を蓄積してきたはずの私たちの国が行うことだろうか。

夕刻、辺野古を後にして、那覇に戻った。

24wackyさんと、スーパーマーケットでオリオンビールと惣菜を調達し、もう建物は完成している「沖縄県立博物館・美術館」の横の公園で小宴を開いた。風が気持ちよかった。