子どもたちを連れて、バスで近くのシネコンへ『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』を観に行った。シネコンなんていつも空いているが、意外にも、ほぼ満員だった。もちろん半数は子どもである。このような場合、映画が始まると阿鼻叫喚の空間と化すので、却って気が楽だ。
ちょっと前、『大怪獣バトル』という、怪獣ゴモラを自由に操って他の怪獣と闘うウルトラ番外編のようなテレビ番組があった。息子が熱心に観ていた。昔の着ぐるみ再利用番組『ウルトラファイト』などよりは遥かにマシで、懐かしい怪獣が出てくるとつい見入ってしまうのだった。
映画の登場人物は、その『大怪獣バトル』のレイとゴモラ、米国製も含めたあまりにも多い新旧のウルトラマン、それから初登場のウルトラマンゼロというセブンの息子。ゼロの頭には、アイスラッガーが左右にふたつあり、結構ハイセンスである。
大きな特徴は、ヴァーチャルな世界としてのウルトラ神話。もう地球上での日常生活も、手作りの白兵戦も全く描かれない。神々の棲家であるM78星雲・光の国の成立神話とその危機、抽象的な悪との闘いが、これでもかと見せ付けられる。
テレビ本編を根幹として、番外編や裏話を子ども向け雑誌で展開し、ウルトラ兄弟を増やすことで世界を拡げていくメディア・ミックスの手法は、初代ウルトラマンの時代から積極的に使われてきた。しかしここにきて、手作りという鎖を断ち切り、CGによる物量作戦を用いることによって、ウルトラ神話はほとんど宗教的な色彩を帯びているような気さえ覚えるのだった。
もっとも、聖地巡礼ならば既にしている(その意味では信者か)。ウルトラ創世記に多くの傑作を生み出した金城哲夫が沖縄に帰った後、仕事場としていた部屋が、南風原町の料理屋・松風苑の敷地内に残されている。今年の夏、中を見せていただくことができた。鞍馬天狗や沖縄関連の本の他、安部公房の『箱男』なども書棚にあったのが印象的だった。
松風苑(2009年) Leica M4、Biogon 35mmF2、Rollei Retro400、イルフォードMG IV RC、2号