今日、所用で札幌に行ってきた。折角なので、店舗をオープンしたばかりの書肆吉成まで足を運んだ。ミニコミ誌『アフンルパル通信』を発行しているところであり、以前、ジョナス・メカスに関する記事を読みたくてバックナンバーを取り寄せたことがある。
札幌駅の北、元町駅と北二十四条駅との間あたりにある。今朝雪が少し積もったとかで、街路樹の下にはまだじゃりじゃりになった雪が残っていた。歩くのは好きなタチだが、かなり寒かった。
古本の品揃えはかなり良かった。このような、志のある古本屋に入ると、足が棒のようになる。何冊もあっ欲しいという本があったが、ここは堪えて(笑)、2冊をわがものにした。
ついでに、『アフンルパル通信』の創刊号も購入。吉増剛造が詩を寄稿していて、その原稿用紙が薄い紙に縮小印刷され、帯になっている。吉増のあまりにも独特な、文字がカミキリムシのように蠢いて紙を持つ手を咬みそうな世界、それがミニチュアになって、すぐに破れそうで儚い。つくづく変な詩人である。
吉増剛造が奄美・沖縄を歩く映画、『島ノ唄』(伊藤憲)のパンフレットにも、原稿用紙2枚のコピーを付けてくれていて、これも蜻蛉の羽のようで大事にとってある。かつて、吉増は8ミリ映画について、「脈動を感じます。それはたぶん8ミリのもっているにごり、にじみから来るのでしょう」(『8ミリ映画制作マニュアル2001』、ムエン通信)と表現した。この儚くて同時に強い感覚は好きである。
「光の落葉―奄美、加計呂麻」の原稿(一部)
「アフンルパル」とは、アイヌ世界において、あの世への入口となる凹みだという。死の凹みは生の蠢き、書肆吉成も札幌の凹み?