所用で北海道に足を運んだついでに、北海道立近代美術館の常設展「今田敬一の眼」を観てきた。
今田敬一を含め、すべて北海道の美術に貢献した画家たちである。しかし、三岸好太郎と珍しい有島武郎の絵以外は、名前を眼にするのもはじめてだ。また、帝銀事件で容疑者とされた平澤大�胎(平沢貞通)の作品も1点あった。帰宅してから、150人を紹介している『近代日本美術家列伝』(神奈川県立近代美術館編、美術出版社、1999年)をひもといてみたが、一人も見当たらなかった。
素晴らしいと感じる画家は何人もいた。パンフの表紙(「朝の祈り」、1906年)に採用されている林竹治郎は、エッジが丸く溶けるようだ。年長の子供が押さえている本は聖書だろうか。背後の鏡のフレームには十字架が見える。北大前身の札幌農学校には外国人教師を多く招き、クリスチャンとなった学生も多かったという。
能勢真美の作品は、鬱蒼とした沼を描いた「緑庭」と、ゴーギャン風に熱帯の裸の女性を描いた「青い鳥」。透明感というのか、抜ける感じが良い。
中村善策の「摩周湖」は、しばらく階段の踊り場から眺めるほど深い群青色に眼が惹きつけられるものだった。
札幌はまだ寒く、雪が降っていた。鳩のように歩き、旨いと教えてもらったラーメン屋「五丈原」まで辿り着いた。スープが旨かった。