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自縄自縛日記

朴三石『教育を受ける権利と朝鮮学校』

2011-09-02 01:09:02 | 韓国・朝鮮

朴三石『教育を受ける権利と朝鮮学校 高校無償化問題から見えてきたこと』(日本評論社、2011年)を読む。著者は、『海外コリアン』(中公新書、2002年)を書いた人でもある。

菅政権は、その本当の最後において、高校無償化法の朝鮮学校への適用プロセスを再開した。遅きに失した感があるが、ここは、何とか首相退任前に正常化の道筋を作っておこうとした判断を評価すべきだろう。もとより政治とは無関係であるべき理念のもと制定された法律であったが、北朝鮮憎しのスケープゴートにされてしまっていたのである。日本の植民地支配から連なる歴史的経緯と、拉致被害と、子どもたちのアイデンティティに沿った教育とは、本来、別々に考えなければならない。

歴史のなかに朝鮮人学校を位置付け、その差別的待遇や高校無償化問題についてまとめた類書が見当たらないだけに、本書の存在価値は大きい。歴史にも背景にも視線を向けることなく暴言を吐いてエクスタシーを得る者たちは、恥について知り、これ以上恥の上塗りをしないようにしなければならぬ。

ここに書かれていること。

日本国憲法の対象には在日コリアンも含まれている、と解釈されることが通説。その下で、在日コリアンの教育を受ける権利が保障されている。
○さまざまな国際人権法により、在日コリアンは民族教育を受ける権利を保障されている。それを行おうとしない日本政府に対し、国連等は何度も勧告してきた。
○在日コリアンの納税額に対し、リターンが限定的である。朝鮮学校もそのひとつ。
○税制、大学受験、資格受験、スポーツ大会への参加、学校近辺の安全設備の整備など、さまざまな局面で、日本政府は朝鮮学校に差別的な対策を取ってきている。
○根本的には、朝鮮学校を現在の「各種学校」扱いではなく、日本の学校同等の「学校教育法一条」に準じた扱いとすべき。

さて、高校無償化プロセスはすんなりと正常化するだろうか。

●参照
枝川でのシンポジウム「高校無償化からの排除、助成金停止 教育における民族差別を許さない」
荒井英郎+京極高英『朝鮮の子』
朴三石『海外コリアン』、カザフのコリアンに関するドキュメンタリー ラウレンティー・ソン『フルンゼ実験農場』『コレサラム』