Sightsong

自縄自縛日記

デリーの爆弾テロ、3人のサニア

2011-09-14 17:04:52 | 南アジア

2011年9月7日の午前10時11分に、デリーの高等裁判所前で爆弾テロがあった。その日の夜にブバネーシュワルからデリー入りする予定だったため、電話での確認に追われ、さらに空港に着いてみると待てど暮らせど乗るはずの飛行機が来ない。待合室ではテロの特集番組一色、「厳しい反テロ法が必要だと思いますか」との質問に対するfacebookやtwitterでの反応が募集され、随時紹介されていた。このあたりは日本より上である。

結局、デリーのホテルにチェックインできたのは午前2時半頃だった。


ブバネーシュワル空港の待合室にて

ネットで見た限りでは、日本での報道は最初の1回だけのようで、もちろんこの件に限らないのだが温度差が大きい(なでしこジャパンよりも大事件だと思うが)。9月10日の「Hindustan Times」紙では、爆発後に送られてきたメールを紹介している。その中には、次のターゲットは、デリーのショッピングモールやアーメダバードだというものもある。愉快犯かもしれないのだが、この報道だって重要である。


9月10日の「Hindustan Times」紙より

事件翌日のデリーで自動車での移動中、インドの仕事相手と雑談。

「いやそんなわけで、余り寝ていないから眠いよ」
「そうか。でもいちいち騒がないのが一番のテロ対策だと思うよ」
「ところで、ソニア・ガンディーが外国の病院から退院したんだっけ」
「あまり公表されていないんだけどね」
ラジーヴ・ガンディーの何だっけ」
「妻だよ。ラジーヴの母のインディラ・ガンディーはシーク教を弾圧した反動で殺され、ラジーヴはスリランカのLTTEに殺された」
「ソニアの評判はどうなの」
「ラジーヴと結婚するときに恋愛騒動を起こしたし、ビジネスもやってるし、あまり芳しくないね。アンナ・ハザレを見習えっての」
「誰だっけ」
「活動家だよ。こないだ政府に抵抗してハンガー・ストライキをやってた」
「ああ、新聞で読んだ。アンナなのに男なのか」
「俺の妹もアンナだけど(笑)」
「ソニアと言えば、関係ないけど、サニア・ミルザ(※パキスタンのクリケット選手と結婚して国内でバッシングを受けた)の調子はどうなの。6年前にハイデラバード・オープンで初優勝したときは、ちょうどデリーで夕食を食べてたんだけど」
「ソニアはイタリア人で、サニアはインド人だよ。まあ、もうそれほど若いわけじゃないからね」
「でも20代でしょ」
「いや30代・・・ごめん、自信がない(笑)」(※あとで調べたら24歳だった)
「でも可愛いよね。鼻ピアスしてる」
「サニアと言えば、もうひとりインドには可愛いサニアがいるぞ」
「妹か」
「俺の妹はアンナだよ。いや、サニア・ネワルっていうバドミントン選手」(※あとで調べたらSainaとSaniaの2つのスペルがあり、どういうことなのかわからない)
「ワールドクラスなのか」
「去年のコモンウェルスゲームズ(※英連邦に属する国による4年に1回の大会)で優勝した」
「ふーん。ところで話が変わるけど、ターバンは誰がしているの」
「ターバイン(Turbine)?」(※発音はこのあたりではタービンではない)
「ターバン、ターバン。マンモハン・シンがしてるだろ」
「宗教によらないよ。何だろうね、伝統を重んじる人とかアピールする人とか」
「ふーん」


荒松雄『インドとまじわる』

2011-09-14 14:37:16 | 南アジア

去年の10月以来、およそ1年ぶりのインド。ムンバイ行きの機内で、荒松雄『インドとまじわる』(中公文庫、原著1982年)を読む。

著者の故・荒松雄は、1952年からインドに留学している。海外に渡航する人が極めて少ない時代にあって、「インドに泳いででも行きたい」との思いが叶ってのことだったという。それだけに、多くのインドエッセイなどとは一線を画した名著であり、著者のわくわくする気持ちが読者にも伝わってくる。

本書に収められたエッセイは1950年代から80年代まで書かれており、その内容は多岐に渡る。中でも、ヴァーラーナシー(ベナレス)についての「聖地ベナーレス」、デカン高原北部の遺跡カジュラーホ、ベンガル湾に面した街ブバネーシュワルの寺院群やその近くの遺跡コナーラクについてまとめた「カジュラーホからコナーラクへ」、ムガル帝国の苛烈な女性たちについての3本のエッセイはとても面白い。

特にムガル帝国の女性活劇である。ムガル帝国の歴史については馴染が薄かったこともあり、第2代皇帝フマーユーンの墓であるフマーユーン廟(デリー)、第5代皇帝シャー・ジャハーンの建造した要塞ラール・キラー(デリー)とモスクのジャマー・マスジッド(デリー)、シャー・ジャハーンが妻ムムターズ・マハルのために作らせた墓タージ・マハル(アーグラー)といった遺産を訪れる前に読んでおくとさらに愉快に違いない。


本書より、ムガル皇帝第1代-6代系図

●参照
ジャマー・マスジッドの子ども
PENTAX FA 50mm/f1.4でジャムシェドプール、デリー、バンコク