NHKの「BS世界のドキュメンタリー」枠で放送されたドキュメンタリー、『タリバンに売られた娘』(2010年)を観る。
原題は『I Was Worth 50 Sheep』、つまり、娘は10歳かそこらで50頭の羊と交換されたりする(※sheepは単複同形。仮に野球チームができても、広島カープと同様に江戸川シープなどとなる)。勿論羊だけではない。このドキュでは、土地やオカネ(例えば、5万アフガニ=10万円)などと交換されてきた実態が紹介される。ある女性が自虐的に言う「女性は犬以下、男性の所有物」を示すように。
ここに登場する女性サベレは、やはり売り渡された先で夫・ゴルムハンマドの暴力に耐えかねて脱出、支援組織の「女性シェルター」で生活している。そこに、妹ファルザネ、母とその再婚相手がサベレを引き取りに現れる。ゴルムハンマドに知られたら殺されてしまうため、誰にも住所を教えないという約束で引っ越し、その一方で、離婚を実現させるため訴訟する。凶悪犯でもあり警察が行方を追っているゴルムハンマドは法廷に現れない。義父は彼を騙して警察に逮捕させる。
それから1年、ファルザネは羊と引き換えにタリバンの男に引き渡され、行方が知れない。サベレの離婚協議は続く。
「女性シェルター」のスタッフが、またタリバン政権に戻るようなことがあったら・・・と恐怖を口にする。女性の扱いがタリバンの意図により酷くなった実状はよくわかる。しかし、すべての原因がタリバンにあるようにつくるドキュメンタリー作りには、違和感を覚える。
●参照 アフガニスタン
○『タリバンに売られた娘』番組サイト
○セディク・バルマク『アフガン零年/OSAMA』
○モフセン・マフマルバフ『カンダハール』
○モフセン・マフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』
○中東の今と日本 私たちに何ができるか(2010/11/23)
○ソ連のアフガニスタン侵攻 30年の後(2009/6/6)
○『復興資金はどこに消えた』 アフガンの闇
○イエジー・スコリモフスキ『エッセンシャル・キリング』
○ピーター・ブルック『注目すべき人々との出会い』(アフガンロケ)